表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/147

十七

「なによ! せっかく色々と話してたのに……」

「どんだけ話してんだよ。買い出しに行くんだろ?」

「ちょっとしか話してないでしょ」

「止めなきゃ、いつまででも話してそうだったんでね」

「そんなことないわよ!」

「アナト~王子様が好きだもんね~」

「べ、別に好きじゃないわよ! それにあの人は騎士様でしょ!」

「この国の王子様だって」

「え? うそ!?」

「本当らしい。イシュタムが言ってた」

「本当? 本当に王子様なの?」

「うん~」

 なんか、アナトの顔つきが変わった。夢見る乙女って感じだ。女神とか言うけど、その辺の普通の女の子と変わんないよな。

「えー、今度会ったとき、どうしよう……」

「どうしようって何が?」

「え? やだ! 決まってるじゃない!」

「決まってるんですか……」

「今日だって、良い感じだったし……」

「そういや、何を話してたんだ?」

「んーどこへ行くのかとか、連れの人数とか、どんな人かとかそんな感じね」

 やっぱりあやしい……。

「それって、情報収集されてないか?」

「やっぱりそう思う?」

 おっ? アナトも分かってるのか? じゃあ、わざと話し込んでたとか?

「絶対に、私のことを見初めたのよね? それで、私のことを知りたかったに違いないわ」

「……いや、違うだろ……」

「いやーん、どうしよう……」

「聞けよ。ち・が・うだろ!」

「違わないかもよ?」

「アナト、あいつのことあやしいって思わないのか?」

「イケメンは正義! どこもあやしいところなんて無いわよ!」

 俺は、思いっきり溜息を吐く。ダメだこりゃ……。

「分かった。分かったから、とりあえず買い出ししよう」

「うんうん」

 イシュタムが、俺に同意して頷いた。

「あと……腹減った……」

 朝、飯も食わずに家から引きずり出され、干し肉をかじりながらここまでやって来たんだ。ろくに飯も食ってなくてもう限界だ……。

「そうね。そういえばお腹空いたわね」

「わたしも~」

「よし、じゃあ、なにか食いに行こうぜ」

「いいけど、お金あるの?」

「うっ……」

 俺が持っているのは、おそらく一番安い貨幣だと思われるもの一枚……。これじゃあ、何も買えないっぽい……。

「ソーマの分は~経費~」

 ん? 経費?

「経費って、俺は金を払わなくていいって事?」

「そうだよ~」

 アナトの奴、そんなこと何も言ってなかったじゃないか!

「ちょっ! なに言ってるの! 経費じゃないわよ!」

「そうなの~? わたし、ご飯食べ放題って言われたから来たんだけど~?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ