十六
強そうな気はしてたけど、マジで国一番の強さなの? 王子様兼勇者みたいな? しかも、あの容姿だぜ。チート過ぎるだろ……。
「うん~強いよ~」
そっか……。王子様ってことは、俺みたいな異世界転生とかはないよな。さすがに、いきなり中身が変わったら気が付くだろうし……。俺のときは、色々と特殊すぎたからな……。
「なに~? ソーマは、ああいうのが好みのタイプ~?」
「いや、俺、男だし!」
「でも、見た目は美少女だよ~」
あーそういえば、一つ心配事があったんだ。イシュタムに聞いても大丈夫かな? 俺、中身は男なんだけど身体は女なんだよな。そのうち、中身が外見に引きずられる事ってあるんだろうか? いつのまにか、思考とか好みとか女の子っぽくなって、あのアーサーが好き! みたいになったりしないよな……。
「あのさ」
「なに~?」
「俺、中身と外見が違うわけだけど、そのうち中身が変わっちゃうってことある?」
「ん~? ソーマ、女の子になりたいの? もう女の子だから、大丈夫だよ~」
「そうじゃなくて、もうこの身体はしょうがないとして、中身まで女の子になったらどうしようかなと……」
「なりたければ~なればいいんじゃない~? なりたくなければ~ならなければいいんじゃない~?」
え? そんな簡単でいいのか? そういえば、この世界は精神的な作用がかなり大きい世界だった。自分の意思で俺、男でいられるって事か?
「そっか」
それなら、とりあえずは今のままでもいいか。
「あ、あと、この身体の元の持ち主って何らかの形でこの身体に干渉したりする? よく、移植したら好みが変わったとか向こうの世界でも聞いたし……」
「癖とかは~あるだろうけど~その女の子はもういないから~大丈夫~」
「そうなんだ。それなら良かった」
いきなり、自分の意思とは関係なくなにかしてたとかあったら困るからな。
「それにしてもアナトの奴、いつまでアーサーと話してんだ?」
アナトとアーサーを見ると、話が弾んでいるのか一向に終わる気配が無い。仕方がない、声をかけるか……。
「アナトー!」
あまりアーサーには近づきたくないので、この位置から声を張り上げてみた。聞こえているのかいないのか、アナトは俺の呼びかけに反応しない。
「アナト!」
少しさっきよりも大きな声で呼びかける。しぶしぶ、こっちを見るアナト。
「遅くなるから行こう!」
そう伝えると、残念そうな顔でアーサーとの会話を切り上げ、丁寧に礼をしてこっちに向かってきた。




