十五
あの二人がやっていたことを思い出してみる。女の子の方が小さな玉に祈ってた。あれ、魔法を入れていたのか? そして、チャライ兄ちゃんが拳銃みたいなのにその玉を入れて打ち出していた。あれ? でも、なんで二人でやるんだ? その形だと、魔法を使えるのは女の子の方だよな? 兄ちゃん、いらない気がするんだけど……。
「イシュタム、あれって、女の子が魔法を使うで間違いないか?」
「うん~そうだよ」
じゃあ、兄ちゃんは何をするんだ? ただ単に魔法を打ち出してるだけ?
「でも~あの女の子に魔法の知識はないよ~」
「え? どういうこと?」
「あの女の子に魔法を使わせてるのが、チャラチャラした男の方だよ~」
あーイシュタムから見ても、チャライ兄ちゃんなのか。こんなゴスロリっぽい格好をしてるから、ああいうのは普通なんだと思ってた。
「どうやって使わせてるんだ?」
「え~とね~」
イシュタムが考え込む。
「分かんない~」
気を持たせて、結局分からないとか……。でもまぁ、期待出来ないと思っていたけど、女の子のこととか分かったし、魔法を使えるやつっていうのは見分けられるのかな……?
「あ、じゃあ、あそこでアナトと話してる奴は?」
「う~ん……」
おっ! なんか分かるか?
「あれは~王子様だよ~」
いや、そんな見た目とか雰囲気とかどうでもいい。そんなの見れば分かる。アナトも夢中だしな。というか、イシュタムもやはりああいうのが好きなのか? 王子様とか言っちゃってるし……。
「えっと、見た目とかじゃなくて中身というか……」
「中身も~王子様だよ~」
「あぁ、うん……。俺もそう思う……。そういうのじゃなくて、あいつってこの世界の人間?」
もう、単刀直入に聞いた方が早いや。
「そうだよ~」
「俺みたいに、異世界転生した奴とかじゃなくて、正真正銘、この世界の人間?」
「なんでそんなこと聞くの~?」
「ちょっと、気になることがあって……」
「ふ~ん」
この様子だと、あいつはこの世界の人間か、イシュタムには分からないってことかな?
「あの人は~」
おっ? なにかあるのか?
「この国の王子様だよ~」
「へっ?」
ちょっと待て! 王子様って、比喩とかじゃなくてマジもん? マジで王子様ってこと?
「いやいやいや。なんでソロで行動なんてしてんの? 王子様なら、いっぱいお供とか付くでしょ?」
「だって~この国で一番、強いもん~」
「え? そうなの?」




