十二
そんなことを考えながら、無事に最前列までたどり着く。今度は、特に何もないようだ。まぁ、あれだ。一日に二回も殺されかけるってのもなんだが、さすがに三回ってのは無いよな。アニメやラノベじゃあるまいし、そんなに事件ばかり起こるなんて普通じゃあり得ない。
最前列で大道芸を見てみる。これは手品? なのかな? 拳銃みたいなものを持ったチャラチャラした兄ちゃんが、引き金を引くと火や水、風などの現象が少しの間おきる。現象が起きる度に歓声が上がり、もの凄い人気だ。あれ、どうやってやってるんだろう?
気になったので兄ちゃんの周りを見てみると、小さな女の子がすぐ側に居た。ミミよりは大きいな。小学校の3~4年生ぐらい? その子が、なにやら小さな玉に向かって祈っているような感じだ。あれもパフォーマンスなのかな? その玉を受け取り、拳銃みたいなものに詰める兄ちゃん。それで引き金を引くと色々な現象が起きる。まるで魔法みたいだけど、やっぱり手品なのかな? うーん……よく分かんないや。
考え込んでいると、突然、腕を引かれた。驚き振り返ると、そこには先ほどの騎士様アーサーがいる。なんでここにいるんだ?
「失礼。声をかけたのですが聞こえていないみたいでしたので……」
「え? あ、いえ」
「お一人ですか?」
「いえ。後二人いるんですが、この大道芸を見ようとして人混みではぐれてしまって……」
ヤバイな……。この人、なんかあやしいんだよな……。イシュタムみたいな怪しさじゃなくて、なんていうか身の危険を感じるというか……。あ、それはイシュタムも一緒か。
「それなら、これが終わったら一緒に探しましょう。お一人は、先ほど一緒にいた女性ですか?」
「はい」
「もう一人は?」
「黒髪でゴスロリっぽい服を着た女の子」
って、言ってから気が付いたけどゴスロリなんて通じるわけ無いよな。
「分かりました」




