十一
ふぅ……。これで、変な厨二ネームで呼ばなくてすんだ……。とりあえず、超ご機嫌? なイシュタムの後を付いていく。一応、周囲は気にして観察している。この世界って、どれぐらいの文明レベルなんだろうか? 見た感じでは、俺が居た世界の中世ヨーロッパって感じだ。石造りの建物、道も石が敷かれていて歩きやすい。規則的な模様の石畳を見ていると、芸術も発展してるのかな?
色々と考えながら歩いていると、賑やかな広場に出た。広場の中心と思われるところには噴水があり、人が集まっている。大道芸を披露している人も多く、芸や歌、踊りなど色々なものを見ることが出来る。
「すげーな」
「思っていた以上に賑やかね」
アナトも驚いたようで、ずっと大道芸を見つめている。
「せっかくだから、見てこうぜ」
アナトにそう提案すると、大道芸を見ながら頷いた。
「色々とありすぎて、どれから見るか悩むな」
「そうね」
悩んでいると、ひときわ歓声が上がる場所を見つける。人だかりも他よりも多く、これはなにか凄い大道芸に違いない。
「おい、あそこに行かないか?」
俺が指さした先に視線を向け、気になったのかアナトは頷いた。
「凄い人だかりね。気になるし、行ってみましょう」
「わたしも~行く~」
歩き出した俺とアナトの後を、イシュタムが付いてくる。あーあの人混みで離ればなれにならないかな……。
「いったい、なんだろう?」
人混みが空いているところを探しながら、なんの大道芸なのかをチェックする。なんどか、パーンって音が聞こえ、そのたびに歓声が沸く。なんだろ? すげー気になる……。人が多すぎて、全く見えない。ぴょんぴょんと跳びはねてみるが、女の子の身体は背が低く、飛び跳ねても何も見えない。と、少し落ち着こうとしたところで、アナトたちの姿が無いことに気が付いた。あれ? どこに行ったんだ? もしかして、人混みをかき分けて前に行ったのか? そう思うと、居ても立ってもいられなくなり、人混みをかき分けるようにして前へと進む。押されたり、肘鉄を食らったり、色々な目に遭いながらなんとかもうすぐというところまでたどり着いた。 って、あれ? これってついさっきも体験した気がする……。まさか、今回も押し出されて殺されそうになるなんて事はないよな? そんなことになったら、一日で三回も殺されかけたことになる……。




