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 なんとなく、イシュタムを置いていくような感じで言ってみたけど、特に反応はない。俺とアナトは、ゆっくりと足を踏み出した。少し後ろに気を付けながら歩いていると、やっぱり後を付いてきている。ここで待ってるってのは無いか……。

「どこ~いくの~?」

「市場に食料を買い出しに」

 そう言ったとたん、イシュタムが足を止めた。おっ? ここで待ってるのか?

「市場~あっち~」

 そう言いながらイシュタムが指さしたのは、俺たちが向かっているのとは反対の方向だった。

「ん? 街の中心とかにあるんじゃないのか?」

「あっちだよ~」

 変わらず、イシュタムは反対方向を指さしている。

「商業区はあっち~」

 商業区? もしかして、ここって商業区と工業区とか区分けされてるのか?

「ずいぶん、詳しいわね」

 なにかを含んだ感じでアナトが言った。

「だって~三日前からいるもの~」

「三日前? なんで?」

「アナトと美少女を待ってたよ~」

「あ、俺の名前は蒼真だから」

 美少女と呼ばれるのは悪くないけど、俺が呼ばせてるとか思われると嫌だしな……。

「そうま~?」

「うん」

「わかった~そうまって呼ぶ~」

 俺の名前、知らなかったのか……。仕事相手? は弟だし、まぁ、知らなくても当然か。

「わたしは~イシュタム~」

「うん」

闇を齎す者(ダーク・ブリンガー)って呼んでね~」

「はい?」

 なんだ? その厨二全開な呼び名は……? 見た目だけじゃなくて、中身も厨二なのか?

「わたしに~あってるでしょ~」

 ダメだこいつ……。

「しばらく日本にいたら~てれびっていうのからかっこいい名前が聞こえてきて~」

 ん? こいつ、日本にいたのか? って、俺の弟のところに行くはずだったんだから、別に変ではないのか……。

「それで~すっごくそれがおもしろくて~ずっと見てたんだ~」

 こいつが仕事に行かなかったのは、厨二アニメのせいなのか……。

「だから~わたしもかっこいい名前で呼んで貰うんだ~」

「分かった。イシュタムって女神の名前が超カッコイイから、それで呼ぶ」

「え~? イシュタムってカッコイイの~?」

「神さまの名前以上にカッコイイ名前はないだろ?」

「そうなんだ~じゃあ、イシュタムって呼んでもいいよ~」

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