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「え? 俺?」

「うん」

「嫌だよ……。絶対に、丸太で殴られる……」

 俺は、ちらりと横目でイシュタムを見る。その姿には不似合いな丸太を、まだ腕に抱え込んでいる。

「私より、蒼真の方がましだから、お願い!」

 両手を顔の前で合わせて、お願いポーズでアナトが頼み込んできた。

「うーん……。じゃあ、一回だけ……」

 あまりにも必死で頼み込むアナトに、ついつい一回だけと承諾してしまった。恐る恐る、イシュタムのところへと向かう。ゆっくりと歩くせいか、やけに時間が長く感じる。

「話~ついたの~?」

「え、えーと……、一応……その……」

 丸太の動きを確認しながら、イシュタムに話しかける。

「じゃあ~行こうか~」

「あ、うん……って、え?」

 思わずアナトの方を見る。なんだか、期待に満ちた表情でこっちを見てるのが分かる。

「ルートとか話してたんでしょ~? 決まったなら行こうよ~」

「え? あ、そうじゃなくて……」

「まだなにかあるの~?」

「えっと、その……まずは丸太を……」

「あ、ついつい持ちやすいからそのままだった~」

 そう言うと、イシュタムは丸太を空に向かって斜め45度の角度で思いっきり投げた。丸太は、やり投げの槍のように、もの凄いスピードで飛んでいく。あれ、かなり遠くまで飛んだだろうけど、そこに家や人がいないことを祈っておこう。それにしても、やっぱり言うのはためらわれる……。

「あ、もうちょっとアナトと相談してくる」

 そう言い、俺は急いでアナトのところへと戻る。

「無理無理無理! 絶対に無理!」

 俺の言葉を聞いて、アナトは大きく溜息を吐く。

「仕方がないわね……。言って聞くような奴じゃないし、とりあえずは同行して、どこかで上手く逃げるしかないわね」

 俺は、アナトの提案に何度も頷いた。とりあえず、命あっての物種だ。

「おまたせー」

 俺は、愛想笑いを作ってイシュタムに話しかける。

「ちょっと~待ったかな~」

「話が終わったので、とりあえず食料の買い出しに行くけど、イシュタムはどうする?」

 ここで、待ってるとか言ってくれたら、そのまま置いていくんだけどな……。

「わかった~」

 分かったって、どっちだろう? 分かった付いていく? それとも、分かった待ってる? イシュタムの返事と様子では、どちらなのか分からない……。まぁ、とりあえず移動してみれば分かるか。

「じゃあ、行くね」

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