八
「そういう奴よ。何も考えないで行動してるっぽいんだよね……。おかげで、周りが困っているのに、まったく気にしてないし……」
「あぁ、いるよね。そういうの……」
俺は、アナトを見てみた。こいつも、あそこまでじゃないけどそんな感じだよな。俺の迷惑とか、考えてないよな。
「それよりも不思議なのは、なんで仕事をしようという気になったのか……」
アナトは、ちらりとイシュタムを見た。
「いつも、どんなに言われても仕事しないのに……」
「なにか気に入ったとか? 面白そうだったとか?」
「そんなことでは、あいつは仕事しないわよ」
「そうなんだ……」
やっぱ、なんかあるのかな? アナトも結構、うさんくさいけど、あっちはもっとうさんくさい。
「そういえば、あのイシュタムも女神とか言ってたけど、この世界の神なのか?」
俺の質問に、アナトは大きく溜息を吐いた。
「蒼真の世界よ。まぁでも、あいつのことは知らなくてもいいわ」
俺の世界のなのか? あれか? 神さまにも部署とかあるのか? 俺の世界担当とか、この世界担当とか? だとすると、なんだか会社みたいだな。そういや、上司とかアナトは言ってたし、マジで会社?
「話は~ついたの~?」
突然、背後から声がかかる。俺とアナトはびっくりした猫のように、その場で飛び上がるほど驚いた。揃って、恐る恐る声のした方へと視線を向ける。そこには、予想通りイシュタムの姿があった。
「話は~ついたの~?」
まだ、丸太を抱えたまま、同じ質問をイシュタムはしてきた。これ、返答次第では有無を言わさずに殴られるってことか?
「え、えっと……まだ……」
そう答えると、イシュタムは丸太を抱えたまま離れていった。わざわざ離れていくって、案外、律儀なのか?
「さすがに、躊躇無く丸太で殴る奴、俺は遠慮したいんだが……」
「私もしたいわよ……」
なにかとても嫌そうな顔でアナトが答える。
「断れないのか?」
「私からはね……。上司の命令だろうし……」
「それ、本当に上司からの命令なのか? なにか辞令とかあるのか?」
「あるはずよ。それを確認すると、ますます断れなくなるけど……」
アナトが溜息を吐いた。
「それに、命令があっても仕事しないやつなのに、命令無しで仕事しに来るはずが無いわ」
「なんで首にならないんだ?」
「女神は一柱のみ。他にいないからね。人手不足なのよ」
「それなら納得した」
「とりあえず、蒼真が断りにいって。それなら、もしかすると大丈夫かも?」