七
怒り全開な声でそう叫ぶと、イシュタムの方へと向かっていく。
「ん~だって~、そこの美少女が助けてくれって言うんだもの~」
「はぁ? なんで蒼真がそんなこと言うのよ!」
「だって~アナトってば殺そうとしてたでしょ~?」
「なんで、私が蒼真を殺さなきゃいけないのよ!」
アナトが俺を指さす。
「いや、殺されかけた」
ここは、はっきりと言うべきだよな。マジで死ぬかと思ったしな……。ナーナさんのときはものすごく気持ち良いというのもあったから、プラマイゼロだったけど、今回は苦しいだけだったからな……。
「え? 嘘でしょ?」
アナトが、信じられないというような顔をした。
「こうやって、俺の襟元を掴んで締め上げて殺そうとしていた」
アナトがやっていたのを真似てみせる。
「あ、あれは……ちょっと熱が入っただけで、殺そうなんて思ってなかったわよ……」
「ふーん……」
「本当よ!」
「まぁいいけど、一つ貸しな」
「貸しってなによ?」
「貸しは貸しだよ。いつか返して貰うから」
俺の言葉に、アナトはなにかつぶやいている。まぁ、アナトはとりあえず置いておくとして、問題はこっちだよな……。イシュタムとかいうゴスロリっぽい女神。何の躊躇もなくアナトを殴ったっぽいんだよな……。そんな物騒な奴、神さまでも側に居るのはいやなんだけど……? どうすればいい? かなり複雑な表情でイシュタムを見てみるが、向こうは何も気にしていない表情をしている。
「蒼真、それよりもちょっと……」
イシュタムを見ながら考え込んでいると、急に腕を引かれた。見ると、アナトがこっちに来いって感じで俺の腕を掴んでいた。
「なに?」
少しイシュタムから離れ、何事かとアナトに尋ねる。
「このままだと、あいつが付いてくるけど、どうする?」
「どうするも何も、俺は特に何もされてないから、よく分かんない」
「いや、あいつがサボったせいで、私は間違えることになったんだけど?」
「そうだけど、でも、代わりに弟は助かったし、俺は俺でここに異世界転生できて、超美少女になれたわけだし……いや、せっかくだから、イケメンになりたかったが、それはもうこの際どうでもいい」
「え? じゃあ、蒼真はあいつと一緒でもいいってこと?」
うーん、それには返答しにくいんだよな……。
「あのイシュタムって、どういう奴? さっき、躊躇無くアナトを殴ったみたいなんだけど……」




