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「その顔、殴ってもいい? いいわよね? 私には、その権利があるわよね?」

 ここまで怒りをあらわにするアナト……。いったい、この少女との間に何があったんだ?

「それで、このすっごい美少女があの時の人間? 名前、なんだけ?」

「蒼真」

 名前を聞かれて、ついつい答えてしまった。

「あれ~? そんな名前だったっけ?」

「予定の人物とは別人よ! だから、こんなことになってんじゃない!」

「あ~そうだったね~」

 アナトが拳を振り上げた。俺は、慌ててアナトの腕に抱きつき止める。

「それで? なんの用なの?」

 怒りでふるふると震えるのをこらえながら用を確認する。

「ん~手助け?」

「そんなものいらないわ!」

 アナトはまた、大きな声で叫ぶ。

「だいたい、こんなことになってるのも、あんたのせいでしょ!」

「そうだっけ~?」

「そうよ! あの日、貴方が現場に居ないっていうから、急遽、私が行かされたのよ! 分かってんの?」

「あーそうだった~」

 悪いと思っていないようなゴスロリっぽい少女の答えに、アナトの気持ちが良く分かる。というか、俺、当事者じゃね?

「まぁ~あれよ。気にしな~い」

 悪びれた様子もないこのゴスロリ? に、俺もちょっと怒りがわいてきた。

「そんなことよりも~」

「そんなこと?」

 あーもう無理! アナトの怒りを抑えるのは、俺には無理! そう思い、アナトの腕をつかんでいた手の力を緩める。

「だって~もっと重要な話があるんだも~ん」

 こいつ、素が出てきたのか? 変な話し方を始めた。いや、元々こんな感じではあったが、輪をかけて変になってる。

「なによ! その重要な話って!」

「え~とね、アナトたちの手伝いすることになったんだよ~」

 突然の爆弾発言? に俺とアナトは言葉を失った。どれぐらいの時間が経ったのだろう? 二人とも我に返ったときにはゴスロリ? の姿が消えていた。

「あー今のなに?」

「さぁ……?」

「なんか聞いたような気がするけど、気のせい?」

「たぶん」

 そうだよな。元凶の人間が手伝いするって、いうのはありだろうけど、あの様子じゃ……。 俺、あいつのせいで、今ここにいるわけだし……。いや、俺としては結果的に良かったと思う。弟が死ななくて済んだし、俺も異世界に転生したわけだし、丸く収まったと言えば、言えなくもない。そう思うと、俺としては別に恨みもないしいいと言えばいいのか。

「まったく……。何がどうなってるのよ……」

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