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「分かってるって……」

 返事をしてから、ふと出発の時の荷物を思い出した。まさか、あんな山のような荷物ってわけじゃないよな?

「とりあえず食料でしょう。あと水もね。それから、服にアクセサリーに靴でしょう。あ、鞄もいるわね」

「いらないだろ!」

「えーいるわよ」

「食料と水! これだけで充分だろ!」

「何言ってるの! スイーツも必須よ!」

 アナトが真剣な顔で答えた。なんだか、体中から力が抜ける……。

「分かった。スイーツまでな。服とかアクセサリーとかはやめてくれ……」

「んー、しょうがないわね。今回は、諦めてあげる」

「ははっ……」

 今回ね……。もう、乾いた笑いしか出ないわ……。

「じゃあ、まずは市場へでも行くか。この世界でも市場みたいのあるよな?」

「あるはずよ。実際に街にきたのは初めてだけど、文明レベルを考えたら無い方がおかしいわ」

「だな」

 俺とアナトは、市場を探す。たぶん、こういうのって街の中心部あたりだよな? とりあえず、それっぽいところへ行ってみる。

「絶対に、食料と水だけだからな! 服とかは買わないからな!」

 アナトに念押しをしてみたが、どこ吹く風だ。

「それよりも、蒼真はお金を持ってるの?」

「へ? 金?」

 言われてみて、あわてて服をあちこち叩いてみるが、それらしい感触はない。次に、食料を入れて貰った袋を見てみた。中に、銅貨? なのか? が一枚、入っていた。

「あるぜ!」

 銅貨を袋から取りだしアナトに見せる。なぜか、バカにされたような顔をされ、視線を反らされた。

「なんだよ! 金だろ!」

 まぁ、おそらく、一番安い硬貨なんだとは思うが……。それに、これがどれぐらいの価値があるのかも分からないが……。

「そうね……。それだけじゃ、殆ど何も買えないけど……」

「え? マジ?」

「最近、なんだか物価が上がってきたのよねぇ~」

 後ろから、聞き覚えのない声が聞こえてきた。アナトと揃って振り返る。

「あーっ!」

 振り返ったアナトは、いきなり叫びだし指をさした。

「お久しぶり~」

 声の主は、ゴスロリ? っぽいかっこうをした、俺たちと同じぐらいの少女だった。黒髪、黒い瞳だけど東洋人っぽくはないな……。まぁ、ここは異世界だから、髪の色は色々とあるみたいだし、気にすることでもないか。

「ちょ、ちょっとあんた! どの面下げて私の前に現れたのよ!」

「こんな顔かしら?」

 アナトの拳が、硬く握りしめられた。




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