四
「分かってるって……」
返事をしてから、ふと出発の時の荷物を思い出した。まさか、あんな山のような荷物ってわけじゃないよな?
「とりあえず食料でしょう。あと水もね。それから、服にアクセサリーに靴でしょう。あ、鞄もいるわね」
「いらないだろ!」
「えーいるわよ」
「食料と水! これだけで充分だろ!」
「何言ってるの! スイーツも必須よ!」
アナトが真剣な顔で答えた。なんだか、体中から力が抜ける……。
「分かった。スイーツまでな。服とかアクセサリーとかはやめてくれ……」
「んー、しょうがないわね。今回は、諦めてあげる」
「ははっ……」
今回ね……。もう、乾いた笑いしか出ないわ……。
「じゃあ、まずは市場へでも行くか。この世界でも市場みたいのあるよな?」
「あるはずよ。実際に街にきたのは初めてだけど、文明レベルを考えたら無い方がおかしいわ」
「だな」
俺とアナトは、市場を探す。たぶん、こういうのって街の中心部あたりだよな? とりあえず、それっぽいところへ行ってみる。
「絶対に、食料と水だけだからな! 服とかは買わないからな!」
アナトに念押しをしてみたが、どこ吹く風だ。
「それよりも、蒼真はお金を持ってるの?」
「へ? 金?」
言われてみて、あわてて服をあちこち叩いてみるが、それらしい感触はない。次に、食料を入れて貰った袋を見てみた。中に、銅貨? なのか? が一枚、入っていた。
「あるぜ!」
銅貨を袋から取りだしアナトに見せる。なぜか、バカにされたような顔をされ、視線を反らされた。
「なんだよ! 金だろ!」
まぁ、おそらく、一番安い硬貨なんだとは思うが……。それに、これがどれぐらいの価値があるのかも分からないが……。
「そうね……。それだけじゃ、殆ど何も買えないけど……」
「え? マジ?」
「最近、なんだか物価が上がってきたのよねぇ~」
後ろから、聞き覚えのない声が聞こえてきた。アナトと揃って振り返る。
「あーっ!」
振り返ったアナトは、いきなり叫びだし指をさした。
「お久しぶり~」
声の主は、ゴスロリ? っぽいかっこうをした、俺たちと同じぐらいの少女だった。黒髪、黒い瞳だけど東洋人っぽくはないな……。まぁ、ここは異世界だから、髪の色は色々とあるみたいだし、気にすることでもないか。
「ちょ、ちょっとあんた! どの面下げて私の前に現れたのよ!」
「こんな顔かしら?」
アナトの拳が、硬く握りしめられた。




