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 小声でこそこそと話す。

「何言ってんの? イケメンに悪い人なんていないわよ」

 同じく、アナトも小声で答える。

「いや、いるから……」

 アーサーの方を見る。俺の視線に気が付いたのか、爽やかな笑顔が返ってきた。俺が女の子だったらマジで以下略。

「とにかく、会ったばかりの奴だし、信用できるかどうか分かんないんだから……」

 俺の言葉に、アナトは派手に頬を膨らませた。俺への抗議らしい。

「何度か会って、信用できる人だって分かったら、そのときはお願いしよう」

 まぁ、もう会うことなんてないだろうけどな。とりあえず、アナトが納得してくれればいいや。

「えーもしかして蒼真、妬いてるとか?」

「ばっ、ばか! そんなことあるわけないだろ!」

 思わず、大声を出してしまう。

「そう?」

 なんか、アナトがニヤニヤしてる……。だいたい、俺としてはアナトよりもナーナさんの方が……。じゃなくて、今、このイケメンをどうするかだよ! マジ! イケメンで好感度高くて爽やかで一見、どこも怪しいところがないけど、なんか気に入らない。いや、別に俺がイケメンじゃないから言ってるわけじゃなく、感だけどなんか怪しい。

「とりあえず、行こう。食料とか色々と買い出しするんだろ?」

「まぁ、蒼真が嫌だって言うんなら仕方がないわね」

 ということで、さっさとこの場から離れよう。

「すみません。とりあえず二人で楽しみたいので……」

「そうですか……残念です」

 あれ? やけにあっさりと引き下がった。俺の気のせい?

「私は、この先にある詰め所の方に待機していますので、何かあったら声をかけてください」

「はい。ありがとうございます」

 一応、礼を述べておく。すると、アーサーさんが俺の手を取った。

「それでは、お気を付けて」

 そう言い終わると、俺の手の甲に軽く口づける……。何それ? 今の何? 映画とかであるヨーロッパの貴族とかがやってる挨拶? この人、マジで騎士? もう俺、どういう反応をすればいのか分かんねー!

「蒼真?」

 アナトに呼ばれて我に返る。

「え? あ、何?」

 ニヤニヤとしながら俺を見るアナト。

「なんか固まってたね」

「そ、そりゃ、俺は男だし、俺の居たところじゃ、あんな習慣無かったし……驚くだろ?」

「まぁ、そっか……」

 ん? なんか素直に納得してくれた。しばらくからかわれるのかと思ったけど、気のせいか……。

「それじゃあ、買い出しに行くわよ」

「あぁ」

「騎士様をお断りしたんだから、ちゃんと蒼真が荷物を持つのよ」


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