三
小声でこそこそと話す。
「何言ってんの? イケメンに悪い人なんていないわよ」
同じく、アナトも小声で答える。
「いや、いるから……」
アーサーの方を見る。俺の視線に気が付いたのか、爽やかな笑顔が返ってきた。俺が女の子だったらマジで以下略。
「とにかく、会ったばかりの奴だし、信用できるかどうか分かんないんだから……」
俺の言葉に、アナトは派手に頬を膨らませた。俺への抗議らしい。
「何度か会って、信用できる人だって分かったら、そのときはお願いしよう」
まぁ、もう会うことなんてないだろうけどな。とりあえず、アナトが納得してくれればいいや。
「えーもしかして蒼真、妬いてるとか?」
「ばっ、ばか! そんなことあるわけないだろ!」
思わず、大声を出してしまう。
「そう?」
なんか、アナトがニヤニヤしてる……。だいたい、俺としてはアナトよりもナーナさんの方が……。じゃなくて、今、このイケメンをどうするかだよ! マジ! イケメンで好感度高くて爽やかで一見、どこも怪しいところがないけど、なんか気に入らない。いや、別に俺がイケメンじゃないから言ってるわけじゃなく、感だけどなんか怪しい。
「とりあえず、行こう。食料とか色々と買い出しするんだろ?」
「まぁ、蒼真が嫌だって言うんなら仕方がないわね」
ということで、さっさとこの場から離れよう。
「すみません。とりあえず二人で楽しみたいので……」
「そうですか……残念です」
あれ? やけにあっさりと引き下がった。俺の気のせい?
「私は、この先にある詰め所の方に待機していますので、何かあったら声をかけてください」
「はい。ありがとうございます」
一応、礼を述べておく。すると、アーサーさんが俺の手を取った。
「それでは、お気を付けて」
そう言い終わると、俺の手の甲に軽く口づける……。何それ? 今の何? 映画とかであるヨーロッパの貴族とかがやってる挨拶? この人、マジで騎士? もう俺、どういう反応をすればいのか分かんねー!
「蒼真?」
アナトに呼ばれて我に返る。
「え? あ、何?」
ニヤニヤとしながら俺を見るアナト。
「なんか固まってたね」
「そ、そりゃ、俺は男だし、俺の居たところじゃ、あんな習慣無かったし……驚くだろ?」
「まぁ、そっか……」
ん? なんか素直に納得してくれた。しばらくからかわれるのかと思ったけど、気のせいか……。
「それじゃあ、買い出しに行くわよ」
「あぁ」
「騎士様をお断りしたんだから、ちゃんと蒼真が荷物を持つのよ」




