二
少し伏せ目がちに、申し訳なさそうな表情と声で謝罪をする。
「いえ。こちらも気を付けるべきでした。もう少しで貴女に怪我をさせてしまうところだった」
やっぱりこの人、騎士なのかな? 物腰も柔らかいし、とても丁寧だ。
「失礼ですが、貴女のお名前は?」
名前? どっちを答えればいいんだろ? この世界ではミーナだよな。でも、中身は蒼真だし……。
「そーまー!」
悩んでいると、俺を呼ぶアナトの声が聞こえてきた。一瞬、騎士の人の顔がこわばった気がする。
「ソーマさんですか? 素敵な名前ですね」
「あ、ありがとうございます」
改めて見ると、この騎士? の人、めちゃくちゃイケメンだ。俺が今、女の子だってのを差し引いても、背が高いし顔も整ってる。そして何よりも金髪碧眼で、もう絵に描いたような騎士だ。なんか、声も低くていい声だし、俺が女の子ならマジ惚れてるかも?
「蒼真? 大丈夫なの?」
「ん? あぁ、別に何ともない」
「それならいいんだけど……って、あら! 何? このちょーイケメン!」
この反応、アナトも女の子だったって事か……。まぁ、見た目は女の子だけど、なんだか普通とは違う感じがしてたんだけど、女の子で間違い無いのか?
「こんにちは。私、蒼真の友人のアナトです」
なんだ? この合コンの自己紹介みたいなやつ……。
「はじめまして。女神と同じ名前とは、素敵ですね」
女神と同じ名前? こいつ、死神とか思ってたけど違うのか? いや、女神かどうかも分からないし、女神だったとしても、何の女神なんだか……。まー普通の人間じゃないよな。それぐらいしか、今のところは分からないしな……。
「私はアーサーです。以後、お見知りおきを」
アーサーって、名前まで騎士じゃん! やっぱこの人、マジで騎士なのか?
「アーサー様、素敵な名前ですね」
アナトの目がハート状態になってる……。しかも様付けだぞ?
「失礼ですが、お二人は旅の途中ですか?」
「はい。こっちの蒼真と二人旅です」
「女性同士での旅、何かと気苦労が多いでしょう……。もしよろしければ、この街に滞在する間は、私に案内と護衛を任せていただけませんか?」
「いいんですか?」
「もちろんです」
「じゃあ、お願い……って蒼真?」
承諾しそうな様子のアナトの腕を引っ張る。そして、耳元に口を寄せた。
「知らない人だぜ? もっと用心しろよ」