街に着いたら殺されかけた
「うぉぉぉぉっっ!」
城門をくぐり、一歩踏み出すと目の前に広がるのは石でできた街並みだった。マジ、中世のヨーロッパって雰囲気だ。すげー! すげー!
「蒼真? 恥ずかしいから、大きな声を出さないでよ」
「あ、ごめん。つい、嬉しくて……」
「一応、今のあなたの姿を忘れないでね」
「あ……」
そうだった。俺、今は美少女だったんだ……。美少女が変な声を張り上げてたら変だよな……。この顔なんだから、玉の輿だって余裕で乗れちゃうだろうし、もっと気をつけよう。………ん? そういえば、玉の輿って結婚するってことだよな……。なんか、色々と頭の中に浮かぶ。ダメだ……それは無理だ……。俺、男だし……男と結婚はできないや……。
「蒼真?」
玉の輿の夢が消えてちょっと残念な気持ちでいると、アナトが俺を覗き込んできた。
「なに?」
「大丈夫なのかなって……」
「ん? あぁ、大丈夫」
まぁ、玉の輿で左うちわの夢が無くなっても、俺には賢者とかいう道がある。それを目指せばいいんじゃない? ここに来るまでの間、アナトに色々と教えて貰ったが、もしかしなくても俺、この世界じゃ最強の魔法使い……いや、魔術師? というか賢者でもよくね? ってぐらい、俺に有利な世界だ。
世界の仕組み? は同じだ。そして、俺の世界では数式で色々と解明されている。要は、この世界の住人よりも世界の理を知っているということになる。しかも、元の世界みたいにエネルギーでアプローチするのではなく、精神力? この辺はまだ今ひとつ分かってないけど、それでアプローチすることになるのだが、それも俺のこの身体はずば抜けているらしい。ということで、知識と力がある俺、最強! ってやつだ。
やはり、異世界転生っていうのは主人公が最強になるようになっているんだな。とりあえず、この魔法を使いこなせるようになれば、生活には困らないよな。家族にも楽をさせてやれるぐらい稼ぐことができるよな?
この先の人生設計を考えていると、なにか通りの向こうが騒がしい。なんだろ?
「アナト、あっちにいってもいいか?」
「あの、騒がしい方?」
「あぁ」
野次馬根性で、騒ぎを見に行きたくなり、そっちへと足を向ける。
「まぁ、急ぐ旅じゃないし、別にいいわよ」
「サンキュー」




