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十六

「……ナ? ミーナ?」

 俺の思考を止めるように、ナーナさんの声が聞こえてきた。

「今日は一緒に寝てもいい?」

 な、なんですとー! これはご褒美ですか? 間違いで死んで、異世界にやって来て、美少女になって色々と大変な俺へのご褒美ですか?

「今日で最後だし……ね?」

「え?」

 今、なんて言った? 俺の聞き間違いか?

「思い出に、ミミも一緒に三人で寝ましょう」

「思い出? 最後?」

「そうよ。悲しいけど、ミーナが決めたことなら私、反対しないから……」

「ちょ、待てよ! じゃなくて待って! 最後って何?」

「ミーナは神殿に入るんでしょう?」

「はい? なんですかそれ?」

 俺、アナトの上司に会いに行くだけだよな? そう言われたよな?

「私ね、何となくミーナが魔力持ちなんじゃないかなって思ってた……」

 ナーナさんは、少し悲しそうな声で話し始めた。

「でも、ごめんね……。ミーナはつらそうだったのに、私ずっと一緒に居たくて連絡しなかった……」

「お姉ちゃん……」

 少し寂しげな笑みを浮かべるナーナさん。

「詳しい話は、夜にね。ミミが心配そうにこっち見てるし……」

「うん」

ナーナさんと約束をし、その場はそれで終わった。とりあえず、アナトに詳細をと思ったら居ない。どこ行ったんだ?

「あ、あの、アナトは?」

「今さっき帰ったわよ」

 お母さんも悲しそうな表情と声音をごまかすようにしている。

「そ、そう……」

 明日か……。明日、絶対に色々と聞き出してやる。だいたい、最初っから全部教えてくれてもいいだろ? 俺、一応、被害者だよな? そうだよな? あ、いや違うか……。俺、嘘を言ったしな……。そういう意味では、アナトが被害者か……。

 ……仕方がない。明日は責めるのはやめておこう……。まずは、今夜ベッドの中でナーナさんとだな。って、なんか意味深だが今は俺も女の子の身体だし、姉妹だし、特にナーナさんも深い意味は無いんだよな。俺も、気をつけよう。


「イヤダ!」

「なにが嫌なのよ!」

 目が覚めると、すでにアナトが来ていた。早すぎないか? 普通、朝食が終わって一息ついたぐらいとか昼過ぎとかに来るもんだろ? もっとこう、常識ってものを考えろよ。しかも、ちゃっかり朝飯を食ってるし……。

「昨日の夜、色々と聞いたからな」

「あら、そう」

「神殿というところに行ったら、女の子は絶対に外に出られないって……」

「そうね」

「だから、行かない」

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