十五
アナトに訴えた後に、俺に向かって同意を求めてきた。だが、どう答えればいいのか分からない。
「それについては、こちらの方で処理をさせて頂きました」
「じゃあ、もう行かなくてもいいでしょ?」
「ですが、これは一時的なもので……」
アナトに向かって必死なナーナさん……。なんだか俺、悪いことでもしたのか? 胸が、とても痛い……。
「だから、何がどうなってんだか教えてくれ」
「さっき説明したけど、あなたの体調の悪さは魔力過多からきてるの。だから、それをコントロールするすべを身につけなくてはならないのよ」
「え? 別に体調は……」
悪くないって言おうとしたら、ものすごい形相でアナトに睨まれた。そういえば俺、体調が悪い設定だったじゃなくて、元の身体の持ち主は体調がよくないんだった。やべー、忘れてた……。でも、修行? すれば良くなるんだろ? なんで、こんなもの凄いことになってるんだろう?
「なんで、こんなことに? マジ分かんないんだけど?」
と思わず言ってしまってから口を手で塞ぐ。やべーよ。今のって、絶対に元の持ち主は使わない言葉だよな。思った通り、ナーナさんが涙をぼろぼろと零しだした。やっぱ、俺が変だってバレた?
「ミーナ……大丈夫だよ。お姉ちゃんが何とかするからね」
「え? あ、うん……」
ナーナさん、俺を渡さないようにしているのか、いきなり抱きしめられた。うぅっ……気持ちいいけど苦しい……。手足をバタバタとさせて苦しさを訴えるけど、ナーナさんは離してくれない。
「離し……て、く、くる……しい……」
俺の訴えで、やっと離してくれたナーナさん。
「えっと、修行だかすると体調とかよくなるって話だから、俺じゃなくて私、行ってみようかなって……」
「……」
ナーナさんが、泣くのをこらえてる。
「……分かったわ……」
そうナーナさんが答えたとたん、お母さんとお父さんが悲しそうにうつむく。なに? 俺、もしかして家族不幸とかしてる? ミミだけが、何も分からずにキョトンとした顔してるけど、他は皆、とても悲しそうな顔をしてる。
「ミーナのこと、よろしくお願いします」
丁寧にアナトに向かって頭を下げるナーナさん。今生の別れでもあるまいし、なんだか大げさだな……。そりゃ、少しは会えなくなるんだろうけど、ずっと会えないって訳じゃないんだし……。ナーナさんやお母さんに色々と説明をするアナト。それを見ながら俺は、今度こそ間違えないって心に誓っていた。




