十四
晩飯の想像をしてると、ミミが腕の中で動き出した。どうやら、父親達を迎えに行きたいようだ。動くミミを気をつけて床に下ろす。すぐに、ミミは嬉しそうにドアから出て行った。俺も、その後を追う。
部屋から出ると、丁度父親が入ってきたところだった。ミミは、嬉しそうに父親に飛びついた。
「おかえりなさい」
なんか、ちょっと恥ずかしかったが普通は言うよなと思い、言ってみた。
「た、ただいま……」
驚いたような顔で返す父親。続いて入ってきたナーナさんとおかあさんとも、同じようなやり取りをした。まぁ、おそらくこの身体の元の持ち主は、やらなかったんだろうな。そんな余裕、無かったんだろう。だから、代わりと言っては何だが俺がやってみようと思う。
「失礼いたします」
なんとなく家族の団らんぽいものを堪能していたら、横からアナトの声が邪魔をした。一瞬、変な顔をした家族だが、昨日アナトが来ていたことを思い出したのか、すぐに普通の顔に戻った。だけど、ナーナさんだけは、超嬉しそうな顔になっている。
「ミーナのお友達よね?」
嬉しさ全開が丸わかりのナーナさん。
「はい」
しれっと嘘を吐くアナト。俺たち、友達じゃないだろ! って、俺も友達って言っちゃってるけど……。
「今日も遊びに来てくれたの?」
「いえ。本日は、ミーナさんのご家族の方にお話があって伺いました」
アナトの言葉に、家族揃って小首を傾げる。なんか可愛い。
「ミーナさんは、魔力持ちと判定されました」
アナトの言葉を聞いたとたん、家族揃ってこの世の終わりというような顔をした。お母さんとナーナさんは、泣き崩れている。あれ? いったいどうしたんだ? なんで、そんなに悲しむんだ?
「そんな……」
ナーナさんがアナトにつかみかかった。
「お願い! ミーナを連れてかないで!」
なにか必死にアナトにすがりつくナーナさん……。どうなってんだ? なんで、こんなことになってんだ? 誰か、説明してくれ!
「でも、このままではミーナさんは……」
悲しそうにアナトがそう言ったとたん、家族全員が静かにうつむいた。
「今までの様子からも、もう限界なのではないかと……」
「違うわ! ミーナは身体が弱いだけよ!」
アナトに向かって、必死に訴えるナーナさん。
「あの……」
俺一人、訳が分からずに思わず声をかける。
「ほら! ミーナはこんなに元気よ! だから、何かの間違いよ? ね? そうでしょ?」