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十三

「だから、この世界にも名前なんて無いわよ」

「え? いや、だって……。異世界転生したら、何とかの世界で何とかという魔王を倒すとかセオリーだろ?」

「ここは、あなたが夜中に見ていたアニメの世界じゃないわよ」

「あ……」

 やっぱ俺、まだどこか現実じゃないな……。まぁ、こんな体験なんて普通はしないからな……。

「ミーナおねえちゃん、いじめられてるの?」

 考え込んでいると、突然ミミが俺の顔を覗き込んできた。

「ん? あーいじめられてるかも?」

「ちょっと! 小さい子供になに言ってるのよ!」

「別に、本当の事だろ?」

「本当じゃないでしょ!」

 アナトと言い合う俺を、ミミがジッと見る。

「ミーナおねえちゃん、なんだかいつもとちがうね」

「え?」

 突然のことに、俺とアナトの動きが止まる。

「俺、じゃない、私、そんなに違う?」

「うん。いっつもベッドのうえにずっとすわってるけど、きょうはちがうね」

「あ、あぁ。ちょっと体調が良くなったからミミと遊ぼうかなって思ったんだ」

 ふぅ……。別人って訳じゃないのか。びっくりしたぜ……。子供って、なんだかみょうに鋭かったりするからな……。

「あ! ぱぱだ!」

 嬉しそうにそう言うと、ミミは窓の外に向かって手を振りだした。帰ってきたのか。どれどれ……。興味本位で外を覗くと、クマ? みたいな凶暴そうな巨大動物を背負っている父親が見えた。思わず、俺の視線は凶暴そうな巨大動物に釘付けになった。あれ、獲ってきたのか? ってことは、父親は猟師? 狩りが仕事? ハンターってやつ? ヤベー燃える! 某、モンスターを退治するゲームみたいだ。後で、話を聞いてみよう。

「ままー! なーなおねえちゃん!」

 続けて、ミミが外に向かって手を振る。ん? ナーナさんとお母さん? もしかしなくても、二人もハンターとか? おそるおそる、父親の後ろへ視線を向ける。円柱型の籠を背中に背負った二人の姿が見えた。籠の中には植物? が見えるので、ハンティングはしていないようだ。だよな。あのナーナさんとお母さんがハンターとか、どうかしてるよな。

 まぁ、とりあえず今日の夕食は肉ってことか? ぶ厚いステーキみたいなのが食えるのか? それとも、原始人の肉みたいな、骨付きのやつか? 晩飯を想像すると、急に腹が鳴り出した。やっぱ、スープと野菜と果物じゃな……。一応、身体が女の子だからか、あまり量を食えないから空腹とか物足りないとかは無いんだが、食った気がしないんだよな。

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