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十二

 答えてから、この身体の元の持ち主の事を思い出した。

「あ、今日は大丈夫。すっごく調子が良いんだ」

「ホント?」

「うん、ホント」

 はち切れんばかりの笑顔を俺に向けて、ミミは勢いよく抱きついてきた。

「ミーナおねえちゃん、ありがとう」

「ん?」

 なんで、礼を言うんだろう?

「だっこ、ありがとう」

 あぁ、抱っこが嬉しかったのか。さっき、アナトから聞いた話だと、おそらくこの身体の元の持ち主はミミに触れる事って無かったんだろうな……。なんだか、寂しいな……。よし! 変わりと言っては何だが、俺がいっぱいミミと触れ合おう! って、またアナトがヘンタイを見るような目で見てる。なんだよ? もしかして、俺の考えてることが分かるのか? そんなことは無いはずだが……。そんなことが出来るなら、そもそも俺と弟を間違えたりしないよな。

 そんなことを考えながら、俺は窓へと向かった。窓と言っても、ガラスがあるわけじゃなく、ダイレクトに外へ繋がっている。外と室内を分けるものは小さな木の扉だけだった。俺は、木の扉を持ち上げすぐ側にある細い棒を扉を支えるように置いた。マジ、昔のヨーロッパ? とかのド田舎っぽい感じだよな。

「もうすこしよるになったら、みんなかえってくるよ」

「そっか。ありがと」

 ミミは家族の帰りを教えてくれたが、窓から離れようとしない。まぁ、ずっと部屋の中じゃ飽きるよな。もう少し、外を見せておこう。ついでに俺も外を覗いてみるけど、マジ森の中。すげー森の中。超森の中。こんなところで生活出来るんだって感心するぐらい、森の中。まぁ、ここは異世界だから、こんな森の中でも平気で生活出来るんだろうか?

 あ、そういえば、この世界ってなんて名前なんだろう? せっかく異世界転生したんだから世界の名前とか必須だよな。

「アナト」

「なに?」

「ここって、なんて名前の世界?」

「無いわよ」

「無い?」

「そう無いわよ」

「なにが無いんだ?」

 いきなり、なにか話が変わってる? というか、もしかして理解されてない? 

「世界の名前よ」

「え? いや、あるだろ?」

「じゃあ、あなたの世界の名前は?」

「日本」

「それは、国の名前」

「じゃあ、地球」

「それは星の名前」

「うっ……」

 言われてみれば、俺の世界には名前って無いよな……。

「だから、この世界にも名前なんて無いわよ」

「え? いや、だって……。異世界転生したら、何とかの世界で何とかという魔王を倒すとかセオリーだろ?」

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