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 ダムの決壊みたいな? ほんの少しの穴が出来ただけで、そこから水があふれ出して壊れてしまうって感じなのか?

「その魔力が、すべて妹に向かって……彼女には、たった一つしか手がなかったの……」

「どういうこと?」

「妹を殺すか、自分を殺すかだったら、どっちを選ぶか……」

「え?」

 自分か、妹か選んだって事か? 自分は死ぬって分かってて、妹を助ける選択……。そんな簡単にできるモンじゃないだろ……。俺のときは、死ぬって知らなかった。ただ、今だけでも弟に成り代わる夢を見ている気になっていただけだった。

「妹を助けるには自分を殺すしかなくて、それで……自分で自分の命を絶ったのよ……」

 俺、軽く考えてた……。そりゃ、死んだって言うから何か事情はあるんだろうとは思ったけど、事故とかそんなのだと思ってた。

「妹に魔力の攻撃が届く前に死んだから、妹は無事だったのがせめてもの救いなのかしら……」

「……」

「蒼真? なんだか、あなたと似てるわね」

「違う……」

「なにが?」

「俺と似てない」

「そう? あなたも弟の代わりに死んだんだし、似てると思うけど?」

「俺、弟の代わりに死ぬって分かってたら返事しなかった」

「……」

「知らなかったから、ただ単にあのひとときだけでも弟になりたかっただけで、身代わりとかそんなの絶対に無理! 俺には、そんなの無理……」

「蒼真……」

 アナトの腕がいきなり俺の首に回された。戸惑っていると腕に力が入り、顔がアナトの胸にぶつかった。ナーナさんみたいに柔らかくないし、凹凸も無いし……でも、なんだか暖かくて今だけはこの胸もいいかなって思えた。

「硬い……」

「何が?」

「胸……」

 答えたとたん、いきなり胸から引き離された。少しこっぱずかしくて、どうすればいいのか分からなくて、ついつい憎まれ口を叩いてしまった。

「ちゃ、ちゃんとあるんだからね!」

「なにが?」

「む……胸よ……」

「ふーん」

 うまくまとまらない気持ちを隠すように、アナトへの憎まれ口を続ける。いちおう、心の中ではあやまっておこう。ごめん……アナト……。

「まぁ、そんなことはどうでもいいわ。魔法についてだけど……」

「あ、そうそう、それ!」

「今日は時間が無くなったので、明日ね」

「え?」

「明日、この家を出て旅に出るから準備はしっかりとするのよ!」

「いや、俺、行かないし……」

「道すがら、魔法についても説明するから、そのつもりでね」

「うっ……」


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