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 ということは、魔王退治の可能性が無いわけじゃないんだな。

「魔王については分かった。それで、俺の魔法って言うのは?」

「正確には、あなたの魔法じゃなくて、その身体の持ち主だった女の子の魔法ね」

「あ、そう……」

 まぁ、そんな設定の方が多いよな。よくあるパターンだ。

「で? どんな魔法?」

 俺の質問に、アナトが少し顔をしかめる。なんだろう? 何か、とても言いにくい魔法とか? 役に立たないどころか、何か破廉恥なやつとか? 女の子のスカートをめくるだけの魔法みたいな? いや、それはそれでおいしい……。だが、それでどうやって魔王を倒すのかは謎だが……。

「そうね……。説明するよりも、実際にやってみた方が分かりやすいかな?」

「ごめん。その前に一ついい?」

 アナトの出端をくじいてしまい申し訳ないが、どうしても気になることが一つある。

「なに?」

「あ、その……弟は、どうしてる?」

 本当は、俺じゃなくて弟が死ぬはずだったそうだ。だから、弟はどうなったのかが気になる。まさか、俺が死んだ後に死んだりしてないよな?

「無事よ」

「そ、そうなんだ……」

 なんか、ホッとしたのと同時に何かが込み上げてくる。グッと我慢をするけど、結構きついな……。

「声を出してもいいのよ」

 突然のアナトの言葉に面食らう。

「そんなに涙を流すなら、声を上げて泣いてもいいのよ」

 そう言われ、必死になってこらえていたものが堰を切って流れ出す。大声を上げてアナトに抱きつき泣き出した。弟が無事と聞いて、こんなに嬉しいと感じるとは思わなかった。弟にとって俺は必要ない存在だったかもしれないけど、俺にとって弟は無事を喜べるほど必要な存在だったんだ。

「蒼真が死んで、ものすごく悲しんでたわよ」

「え?」

 いつも、何かを言いたそうに俺を見ていた弟……。それを少しうっとうしいと思ってた。両親と同じように俺の事を邪魔者って思ってるんだと勝手に考えてた。俺が死んで、悲しんでくれたのか……。

「あ、弟の寿命ってどうなってんだ?」

 泣きながら話すから、なんか変な感じだ。アナト、ちゃんと聞き取れるんだろうか。

「あなたの寿命分は生きるから、後90年は大丈夫」

「……」

 俺、そんなに長生きするんだったんだ……。やっぱり、死ぬまでニートだったんだろうか?

「それなら良かった……」

 生きてたら俺、どんな人生だったのか気になるけど……。聞きにくいよな……。


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