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「そうそう。だから、私の上司のところへ貴方を連れて行かなくてはならなくなっちゃったのよ……。面倒くさいんだけどね……」

「上司?」

 なんだか、いきなりリアルっぽい単語だな。

「そう、上司。説明しなきゃいけないし、本人も連れて行かなきゃいけないし……」

「なんで? その上司がここにくればいいじゃん」

 アナトが、俺を見て溜息を吐いた。

「まぁ、色々とあるのよ……。その辺も、道すがら説明するわ。ところで、話が変わるけど貴方のことはどっちで呼べばいい?」

 名前? あ、そうか。今、俺には名前が二つあるんだった。

「蒼真」

 さっき呼ばれたときに少し違和感があったけど、やっぱりこれが俺の名前だ。

「これで、名前の方は解決ね」

「解決?」

「身体、楽になったんじゃない?」

「そういえば……」

 死んでいたらしいからと思って、たいして気にしていなかったけど、少し違和感があった。まぁ、元々、俺の身体じゃないし、仕方がないと思っていたし、しばらくすれば治るだろうと思ってたんだけど、死んだせいとかじゃなかったのか。

「これで、蒼真も魔法が使えるわね」

「へーそうなんだ……って、え? 魔法?」

「そうよ」

「ちょっと待て! 魔法って、あの魔法?」

「そうよ」

「ファンタジーとかに出てくる魔法?」

「そうだって言ってんでしょ!」

「あ、ごめん……」

 マジ? マジで魔法が使えるのか? ここ、やっぱり異世界だったんだ……。ヤベー俺、これから異世界転生でヒーローになれるってことか? あれ? 俺、今は女の子だからヒロイン? なんか、それだとイメージが違うな……。

「で、俺はどんな魔法が使えるんだ?」

 そう尋ねた俺に向かって、アナトは溜息を吐いた。なんだ? どうしようもない魔法なのか? だが、異世界ならどうしようもない魔法で魔王を倒せたりするんだよな? お約束だよな?

「その前に、この世界には魔王というものは存在しないから」

「うんうん……え?」

 どういうことだ? 魔王が存在しないなら、異世界転生して魔法が使える意味が無いだろ?

「どういうこと?」

「魔法というものもは存在するけど、魔王というものは存在しないってこと」

「これから、魔王が誕生するとか?」

 だよな。それで、俺が魔王を育てるとかで最後は世界を救うためと、魔王への愛情と使命の板挟みになるって感じか? というか、その場合、魔王を産むのは俺か? 俺なのか? それだと、まったく想像出来んし、萌えられない気がする……。


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