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 ミミが心配そうに俺を見た後に、キッとアナトにキツイ視線を向けた。そして、大きく両手を広げて俺の前に立つ。

「ミーナおねえちゃんをいじめたら、ミミおこるよ」

「ミミ……」

 こんな風に家族にかばわれたことなんて無かった俺は、なんだか胸の奥がジーンと熱くなった。鼻の奥も熱くなり、目の奥も熱くなり、何か汗のようなものが出てきそうだ。

「ミミ、このかわいそうなお姉ちゃん、一応、私の友達だから大丈夫だよ」

「ほんとに? ほんとにだいじょうぶ?」

「うん」

 こんな小さな子にこんなことをさせるのって、あまり情操教育によくないよな。だから、仕方がない。ここは俺が折れてやろう。

「わかった……」

 なんだか、ミミは納得していないみたいだな……。こんな小さな子にも、アナトのうさんくささが分かるのか?

「な・ん・で、私が悪い奴みたいになってんの?」

 見るからに機嫌が悪そうなアナトの、更に不機嫌そうな声が聞こえてきた。

「あー子供って、正直だから……」

 やべー……アナトの顔がもっと不機嫌に……。

「あ、それより、今日は色々と教えてくれるんだろ?」

「……」

 アナト、無言だ……。やっぱり、調子に乗りすぎたか?

「いや、さっきのは悪かった。ついつい調子に乗っちゃって……」

「……」

「俺も、いきなりこんな状況だろ? 不安もあってさ……」

「……」

「……アナトさん?」

「……」

「聞いてる? アナトさん」

 無言を貫いていたアナトが、ぷいっと横に顔を向ける。あぁ、やっぱり機嫌悪くなっちゃってたか……。女の子の機嫌とりなんて、どうすればいいんだ? 甘いものを食わせる? って、そんなのここには無いしな……。じゃあ、見た目を褒めるとか? うーん……。それも、どこを褒めれば良いんだ? 胸がかわいそうなのが致命的だよな……。というか、俺に女の子を褒めるなんて高等技術は無い。

「……ま」

「ん?」

 何か聞こえ、反射的に返事をする。

「秋鹿蒼真」

「ん? って、あ、俺の名前か……」

 そういえばそうだった。ずっとミーナって呼ばれてたから、ちょっと自分の名前を忘れてたよ。

「なんなの? いきなりボーッとして、私と話したくないなら、別にいいけど?」

「いや、そうじゃなくて……。ごめん、ちょっと今は……」

 なんだろう……。名前を呼ばれただけなのに、なんだか胸の奥が熱い。そうだよ、俺は秋鹿蒼真なんだよ。ミーナじゃないんだよ……。

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