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「今、水を汲むから待っててね」

「うん」

 俺が答えると、ナーナさんが嬉しそうに笑う。ナーナさんが笑うと、なんだかドキドキするけど……、俺、今は女の子なんだよな? 同性、しかも姉にドキドキってどうなのよ?

「はい。まずは顔を見てみる?」

 井戸から水をくみ上げた桶が俺の前に置かれた。見たいような見たくないような……複雑な気持ちでゆっくりと桶の中を覗き込む。どうか、お母さんやナーナさんに似てますように……。あのごついおっさんには、似てませんように……。

 まだ、くみ上げたばかりで水面が揺れる水面を見た。ゆがんだ水面でも分かるほど、ちょー美少女だ! こんな美少女なら、人生イージーモードだろ? 玉の輿だっていけるだろ? 一生、左うちわの人生、確定だろ? ってことは、死因は自殺じゃないよな……? 事故? それとも……。

「ニーナ?」

「うわっ!」

 不吉な考えが頭をよぎったとき、いきなり背後から声をかけられて飛び上がるほど驚いた。

「え? ごめん、驚かせた?」

 いきなり叫んで飛び上がった俺を、心配そうに見つめるナーナさん。

「あ、ちょっと見惚れてたから……」

 違うって! 自分で自分の顔に見惚れるって変な奴だろ!

「じゃなくて……その……」

 なんとか言い訳をと思ったら、ナーナさんは嬉しそうに笑う。

「ミーナも色々と気にするようになったね。誰か気になる人とかできた?」

 それはあなたです! とは答えられないよな……。

「その、そういうわけじゃなくて、寝込んでいたからちょっと気になって……」

「ちょっとやつれてるけど、大丈夫! 可愛いよ」

「あ、ありがと……」

 身内の欲目を除いても、確かにこの顔は美少女だからナーナさんも本音なんだろうな。それにしても、こんなに美少女なのにニートっぽいし、家族もなんだか腫れ物を扱うみたいな感じだったし……。この身体の元の持ち主がどんな人物だったのか気になる。なんだか、家族には聞きにくいし……。

 あ、そうだ! アナトに聞けばいいんだ。今日、来るって言ってたし、この身体を選んだのもアナトなんだろうし、詳しく知ってるよな?

「ミーナ、お母さんがご飯って呼んでるから、急ごう」

「あ、うん」

 ご飯と聞いて、俺の腹が空腹を訴えた。急いで桶の水を手に取り、バシャバシャと顔を洗う。あ、そういえば顔を洗う洗顔料? とかは……あるわけ無いか……。手早く顔を水で洗い終わると、ナーナさんがタオル? のようなものを差し出していた。

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