十五
「ま、待って!」
なんだ。休憩する気あるんじゃん! 俺はひたすら講義を聞く。イシュタムは、必殺技の練習をしている。アーサーは、何気なく座っているようで、周りに気を配っている。そんな仲、アナトの講義が終わった。
「どう? 出来そう?」
「んーと、ちょっと、待って……」
えーっと、こうなって、こうだから。こうだ! 俺は、目の前の弁当を別の次元へ収納した。
「え? お! 出来た?」
「やったー! 凄いじゃない蒼真!」
「えへへ……」
俺は、何とかマスタ^出来たのかな? 忘れないうちにもう一度やってみよう! そして、俺はもう一個の弁当を異次元に入れた。うんうん。入れるのは大丈夫だ。問題は、取り出しだよな……。俺は、ふんと、力を込めると、異次元に入れた弁当を取り出した。1つ目成功。この調子で、次、行っちゃおう! 俺は、最初に入れた弁当を取り出す。
「あっ!」
弁当がグシャってなった。
「最後の最後で気を抜いたわね……」
「うん……」
アナトがため息を吐いた。
「でもまぁ、初めてにしては上出来よ」
「そうそう~」
イシュタムも俺を褒めてくれる。アーサーも手を叩いている。成功でいいのかな? って言うより、誰がこのクシャってなった弁当を食べるのだろう? やっぱ俺?
「ありがとう!」
いやー難しかったな……。
「俺、次元の解明がこんなに難しいとは思っていなかったよ……」
「へ~そうなの~?」
「うん」
もう、ヘロヘロ……・
「うーん~昔から~普通に~使えたからな~」
そうですか……。それは良かったですね……。俺は、イシュタムを見る。だが、イシュタムは、見ても仕方がないか……。嫌味が通じないしな……。
「ところで、空間魔法を使えるということは、移動でも使えるってこと?」
「それは無理。最初に言ったでしょう。初歩の初歩しか使えないって……」
「そうですか……」
「そっか~蒼真~初歩の初歩しか~使えないのか~」
いや、イシュタム……初歩の初歩でも、凄いんだぞ! 地球では、ここまで解明されてないからな! 俺はイシュタムに凄んでみせたが、やはりどこ吹く風だ。
「まぁ、どうせもう着くんだろ?」
「そうね……」
んじゃ、仕方がないよな……。アナトの言う通り、無難に歩いて、目的地へ向かうとするか……。そのまえに、弁当!
「いただきます」
俺は、クシャとなった弁当を手に取る。
「私がその弁当を食べますよ」
「へっ?」
アーサーが突然、自分の分の弁当と、俺のクシャとなった弁当を取り替えた。