十
「んじゃ、お願いしようかな?」
「はい、分かりました」
アーサーが昼飯を持って来てくれるので、アナトがご機嫌だ。
「アナト……やっぱりアーサーがお昼ご飯を持って来てくれると嬉しい?」
アーサーがいなくなった途端。聞いてみた。
「そりゃ、嬉しいわよ……。なんと言ってもイケメンが給餌してくれるのよ。イケメンは、世の宝よね……」
とろけた表情でそう言った。なんだよ……イケメンって……。俺だって成れるなら、アーサーみたいなイケメンになりたかったわ……。とか思いながら、イケメンが持ってきた昼飯を食う。しかし、朝ご飯が遅かったのか、あまり入らない……。女の子って、こういうとき不便だな……。
「美味しいけど、朝が遅かったから、あまり入らないわね……」
お、アナトも同じか! なんとなく嬉しくなった。
「うん」
まぁ、食べられないのは、仕方がない……。俺は、食べるのを途中でやめ、勉強を始めた。
「あら、ずいぶん熱心ね……」
「うん……。もう、昼飯が入らないから……」
アナトがため息を吐く。
「まぁ、今は、女の子の身体だもんね……」
自分もお昼ごはんを置き、再びため息を吐いた。
「しょうがないよ……」
俺は、一瞬だけ、この女の子の身体を疎ましく思った。美味しいご飯が、そんなんい食べられないなんて……。まぁ、疎ましく思っても、仕方がないんだけど……。
「まぁ、とにかく勉強しましょう」
「うん……」
仕方が無しに、勉強を始める。それにしても、大学時代だって、こんなに勉強したか? というぐらい勉強している。
「蒼真は、勉強が好きなのね」
とうとつにアナトが変なことを言った。
「へ? なんで?」
「だって、一生懸命勉強してるでしょう?」
あぁ、なんだ今の勉強を見てか……。
「そりゃ、別次元に荷物を移動させたいからね」
「ふーん……。そっか……」
アナトがニヤニヤする。
「なっ、本当だってば!」
そりゃ、どっちかって言うと勉強は好きだよ? でも、本当に今は、別次元に物を動かしたいってそのために勉強してるんだよ? そう言っても、アナトは聞かない。まるで、人をガリベン扱いだ。
「まぁ、いいわ。ちゃっちゃと進めましょう」
「あぁ……」
んー。でも、どうしても、分からないところがあるな……。なんだか、頭が煮詰まっているみたいだ。
「少し、休みましょう。その方が、飲み込みもいいし……」
アナトが休憩を申し出た。正直、助かった。このままだと、頭がパンクしてしまう……。
「お茶飲む?」