八
「本当に、怒って無い?」
アナトが笑った。
「怒るもなにも、世界が違う人だからね。彼が亡くなっても、私はこのまま生きるのよ?
」
「そっか……」
でも、アナトってイケメン好きだよな……。
「あ、イケメン好きなのは別よ、見ていて癒されるじゃない」
おっと、心でも読んだ? すごいナイスタイミング! でも、なんだか悲しいな……。世界が違うから、諦めないといけないなんて……。
「まぁ、蒼真は今、美少女なんだし、アーサーが惚れるのも仕方がないって……」
「違う! 俺が他の国へ行かないようにだって!」
アナトがニヤニヤしている。
「本当に違うんだって!」
「そう思っているのは、蒼真だけかもね」
「え?」
今、なんつった?
「さあ、本格的に空間魔法をやるわよ!」
「うん……」
俺は、気になって仕方がない。さっき、アナトが言ったこと……。
「んもう! 聞いてる?
「え? あー……」
やべっ、聞いていなかった……。
「もう!」
「あー、うん。もう、大丈夫!」
俺は、慌ててアナトの方を見た。
「なんだか、もう眠いみたいだから、明日にする?」
「いいの?」
「まあね」
俺は少し考える。
「明日は、休み。空間魔法を教えないとだから……」
「え?」
そういえばアナト……。エルフのときに遠回りしてくれた……。なんだかんだ言って、優しい……。ごめんよ。乳が小さいなんて思って……。
「ありがとう……」
「どうする? 自分の部屋に戻る? それとも。ここで寝る?」
「ここで寝る!」
アナトとは、これでお別れかもしれないと思うと、少しでも長く一緒に居たかった。
「よし! じゃあ、寝る準備をして、枕を持って来ないとね」
「うん。分かった!」
俺は、急いでアナトの部屋を出ていった。
次の日、空間魔法を覚えるために、一日、休みになった。よし! ここで覚えて、あの別次元に物を収納する魔法を覚えるぞ! 俺は、勢い込んだ。それにしても、アナトは朝が早いな……。俺、張り切っていて、朝はかなり早く起きたんだけど、それでも起きている。もしかして……俺、寝相が悪いとか? それとも、イビキをかくとか? なんか、ヤバイことしてるのかな?
「アナト……ちゃんと眠れた?」
思わず、聞いてしまう。
「あら、言ってなかったかしら。私、寝ても寝なくてもいいのよ」
「へ?」
今、なんと? 寝なくても良いとか言ってなかった?
「だから、気にしないで」
「う、うん……」
寝なくても良いって、なんて便利な身体なんだ……。