四
俺は溜め息を吐く。俺、まったく病気のことや、大きな怪我のことなど分かんないからな……。
「蒼真が医者なら、出来るよと教えても良かったんだけどね……」
「すいません……。ただのニートで……」
クスッとアナトが笑う。
「本当だよ」
俺も笑った。
「やっぱり、病状とか症状とか分からないとダメなの?」
「そうね。分からないと、どうにも出来ないでしょう?」
まぁ、言われてみればそうだ。
「じゃあ、透視? 身体の中を見ることは出来ないの?」
アナトが上を向いて考える。
「正確には……分からない……。でもたぶん、無理だと思う」
「そっか……」
まぁ、身体の中を見れたって、症状について理解していないと、どうにもならないあからな……。
「んじゃ、治すの軽い切り傷ぐらいにしておく」
「それがいいかもね」
アナトと二人、ベッドに腰掛けながら色々と話した。でも、肝心なことは話せなかった。このまま、お別れしちゃうの? どうしても、その言葉が出てこなかったのだ。そうして、夜はふけていった。
朝、俺が起きたときには、アナトはもう起きていた。
「おはよう、蒼真」
「ん……おはよ」
俺とアナトは、朝の挨拶をする。
「今日、出発だよね?」
「そうよ、だから、蒼真も早く支度しなさい」
「はーい」
俺は返事をして、顔を洗いに行った。アナトってば、早起きだな……。俺は、欠伸をする。顔を洗いに来ると、そこにはイシュタムが居た。
「おはよう」
「おはよう~」
俺は、イシュタムと朝の挨拶を交わした。
「今日、出発するんだって……。だから、必殺技は今日が無しで」
「え~ないの~
「うん」
俺は顔を洗う。
「うーん~もうちょっと~なのに~」
「なに? 必殺技?」
「うん~」
必殺技かぁ……。正直、どれも今までのと変わらないんだよな……。必殺技と言えるのか……。いや、本人は、必殺技のつもりかもしれない……。まぁ、だから、そっとしておこう。うん、俺って大人だ。
「ところでさ……」
「なに~?」
俺は、アナトに聞けなかったことを聞こうとした。
「あー、やっぱり、いいや……」
「変なの~」
やっぱり、聞けなかった。
「それよりも、早くしないと朝飯が!」
「食べそこねる~」
顔を洗い終わった俺とイシュタムは、急いで食堂へと向かった。
食堂にはアナトとアーサーがいる。
「アーサーおはよう。早いね」
「おはようございます。そうですか?」
「うん」
アーサーは、すでに並べられている食事を前にして答えた。