三
「本当? じゃあ、枕を持ってくる!」
俺は急いでアナトの部屋を後にし、自分の部屋へ向かった。でも、一緒に寝たからと言って、ことがなにか変わる訳じゃない。それに、アナトが良いって言ってくれたのは、俺が今、女の子の身体だからだ……。もし、男だったら、絶対に良いとは言わないだろうな……。でも、俺もアナトみたいな微妙な乳の女の子は……。そんなことを考えているうちに、部屋に着いた。俺は枕を手にし、急いでアナトの部屋に戻る。
やっぱり、ちゃんと聞いた方がいいんだろうか……。でも、聞いたからってどうにか出来る訳でもないし……。俺の考えは迷っていた。迷っているうちに、アナトの部屋に着く。俺は、アナトの部屋をノックする。
「いらっしゃい」
「枕、取ってきた!」
俺は、枕を見せびらかす。アナトは俺を招き入れる。
「どうしたの? 急に……。今まで、そんなこと言ったことないのに……」
「うん……。もう、目的地に近いだろう……? だから、なんとなく!」
やっぱり言えなかった。
「なんか、子供みたい」
アナトが笑っている。別れること、寂しくないのかな? アナトたち女神には、別れとか当たり前なのかな? 俺は、ジッとアナトの顔を見る。
「なに? なんか付いてる?」
「いや……」
俺は、アナトから顔を反らした。
「明日は早いし、もう寝る?」
「もうちょっと話ししたい……」
「そう?」
でも、話がしたいと言っても、別れについて話が出来る訳じゃない……。
「うん」
俺は、笑顔を作った。
「そういえば、初めて会ったときのこと覚えてる?」
「生意気なニート?」
「酷い!」
アナトも笑う。
「そういえば魔法……」
「ん? 使えるようになったでしょう?」
「うん……まぁ……時空魔法? 以外は……」
アナトもなにか考えている。
「まぁ、あれはね……。でも、初級の魔法なら、なんとかなったでしょ?」
「まぁ……」
でもさ、もっと色々と使いたいよ……。
「あ、そういえば俺、回復魔法が使えた!」
ベッドの端に座り込みながらそう言った。
「とは言っても、真皮や表皮、血管を繋げるぐらいだけどね……」
「あら、でも凄いじゃない」
ん? あんまり驚いてない?
「もしかして、俺が回復魔法を使えるって、知ってた?」
「うん。まあね」
アナトは普通の顔をして答えた。
「えー、なんで教えてくれなかったの?」
「医者じゃないから?」
「やっぱりそれか……」