二
女の子だったらというところを強調した。
「まぁ、推測ですが、他の世界の人間だからではないですか?」
俺はハッとする。なんだか、アナトたちとは、ずっと一緒のつもりだった。離れるなんて、思っていなかった。
「まぁ、私の推測です」
俺は、アーサーが進めるものを食べる。美味しい。だけど、なんだか悲しい味がする。何を食べてもそんな感じだ。
「俺、アナトたちとは、ずっと一緒にいるって……」
いったい、いつからそう思っていたんだろう……。楽しくて……。そうじゃないこともたくさんあったけど、それでも楽しくて、いつか別れが来るなんて考えたくなかった。
「私の推測です。ですから、元気出しましょう」
「そうだよな。別れるって決まった訳じゃないし!」
アーサーが笑って見せた。
「そうですよ。ソーマさんらしくありません」
「うんうん!」
でも、頭の中から、アナトたちが消えるということは離れない。それでも、表面上は明るく振る舞った。
暗くなって来た。俺は、たまらずにアナトの部屋へ行く。
「アナト……」
「なに?」
アナトが俺の呼びかけに答える。俺は、言いたいのに言えないジレンマに襲われた。
「いや……えーっと……その……」
「なに? なにかあるなら言ってよ」
アナトが痺れを切らしたのか、聞いてくる。
「あ、いや……明日、出発するんだよな?」
「そうよ」
「分かった!」
俺はそう言うとアナトの部屋を出る。やっぱり聞けないよ……。目的地に着いたら、さようならってなるのかなんて……。どうしたら、ずっとあの二柱と一緒にいられるだろう……。一度だけ、上司? でいいんだよね?
と会ったことがある。なんだか優しそうな人だった。あの人なら、お願いを聞いてくれそう……。目的地に着いたらお願いしてみようか? きっと、一生懸命に頼めば聞いてくれるはず……。
気がつけば、自分の部屋に戻っていた。明日、出発ってことは、もう寝ないと……。でも、今のままでは眠れない……。俺は、自分の部屋を出て、来た道を戻る。戻っていくうちに、またアナトの部屋の前に立ち尽くした。深呼吸をして、アナトの部屋を叩く。
「はーい」
俺は、片手を上げる。
「あら、蒼真・忘れ物?」
「ううん。今日、一緒に寝てもいい?」
アナトが一瞬、怪訝そうな顔付きをした。
「まぁ、いいわ」