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十二

「なに?」

「あ、その……ご飯、足りる?」

「うん」

 本当は足りないけど、女の子ってそんなに食べないんだろうし、それに……この堅いパンは食べるのつらい……。

「そう。それなら良かった」

 なんか、聞きたいことは別にある感じがするんだけど、俺には分からないだろうしスルーしておこう。だって俺には今、とてもつもない重大なミッションがあるんだ……。今の俺にとっては、勇者になるとか魔王を倒しに行くとか賢者を目指すとかよりも超重要なミッションだ。

「あの……」

 思い切ってお母さんに声をかけてみるが、言葉が続かない……。だって、なんて言えばいいんだよ? こんなこと、恥ずかしくて言えないだろ? 

「なに?」

 お母さんが聞き返す。表情は普通だ。今なら言えるんじゃないか? というか、今を逃したら俺、どうすればいいか分かんないし……。

「と……」

「と?」

「トイレどこですか?」

 言った……。家族? に聞くのは超絶バカみたいだけど、実際、俺どこになにがあるか分かんないし……。

「外だけど……」

 やっぱり、不思議そうな顔をしてお母さんが答えた。

「ありがとう」

 俺は、急いでベッドから抜けだしてドアへ向かった。ドアを開けると廊下があると思っていたけど違った。居間? なのか? ナーナさんと、ナーナさんによく似た幼女と、やたらゴツイおっさんが木のテーブルを囲んで座っている。もしかしなくても、家族集合だよな? ということは、あのゴツイおっさんが父親? 幼女は妹? 

「ミーナ? どうしたの」

 ナーナさんが、不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。

「あ、あの……俺、じゃなくて私、トイレに……」

「あぁ、まだ身体がつらくて歩くの大変? 連れて行ってあげるね」

 ナーナさんが椅子から立ち上がり、俺に向かってくる。ちょっと待て! これってなんて罰ゲームだ? 巨乳美少女とトイレって、これ、なんてエロゲ?

「ミーナ?」

 その場でフリーズする俺の顔を、心配そうにナーナさんが覗き込んだ。

「え? あ、あの……場所さえ教えて頂ければ、自分で行けます……」

「もう、無理しなくていいのよ」

 ナーナさんが俺の手を取る。

「外はもう暗いし、心配だからね。あ、つらかったら私に寄りかかっていいからね」

「は、はい……」

 有無を言わせずに、ナーナさんは俺の手を引いて歩き出す。

「あ、つらい? 抱えた方がいいかな?」

「だ、大丈夫!」

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