十五
「しゃけつ?」
アーサーが不思議そうな顔をする。
「んーと……。まだ医学が発達していない時代に、とりあえず血を流せばなんとかなるか……的な?」
「ダメ……なんですか?」
「あー優真は丈夫だったから、病院とか行かなかったか……」
前の世界のことを思い出す。夢で弟を見ているらしいが、病院とは縁遠いいからなぁ……。夢でどこまで見られるか分からないけど、瀉血レベルの医療だと難しいだろうな……。「まぁ、病気は止めるよ。どんな状況か分からないし……」
「そうですか……」
「問題は、怪我だよな……」
俺は、悩んでいる。表皮と真皮をくっつけるぐらいなら出来る。血管もつなげられる。たぶん骨も繋げられる。問題は、どこまで大きな怪我に対応できるかだ。
「昨夜のアーサーぐらいだったら、直ぐに出来る。でも、それ以上になると、どこまで出来るか分かんない」
「色々と大変なんですね……」
「うん……」
アーサーが頭を下げる。
「昨夜は、気軽にやっているようなことを言って、すみませんでした」
ん? そんなこと言ってたっけ? ただ、この力を他の国に渡したくないだっけ? そんなようなことは言っていたけど……。まぁ、気軽に出来ないことが分かれば、プロポーズしたことも気が変わるだろう。俺は、うんうんと頷いた。
「まぁ、切り傷とか、擦り傷ぐらいなら、すぐに直して上げられるよ」
こんなこと言っても、アーサーは強いから、あんまり意味ないだろうな……。
「ありがとうございます」
「まぁ、どうなっても構わないと言うなら、怪我は大きいものでも直せるけど……病気は……」
「大きな怪我になれば、どっちにしろ運まかせですからね……」
そうか。ここって瀉血レベルの医療なんだ。大きな怪我をしたら、まず助からない。
「まぁ、そのときは、命だけは助けるよ・ほかは、どうなっているか分かんないけど……」
「命は助けてくれるんですか?」
「そうだね」
アーサーが優しく微笑んだ。
「ありがとうございます」
俺も笑った。というか、どう答えればよいのか分からなかった。という方が正しい。でも、アーサーを助けたいと思った気持ちは嘘じゃない。どんなことをしても助けるつもりだ。ってことは、ずっと傍に居ないとダメ? 俺、お妃様になるの? って、それは置いておこう。今、めっちゃ良い状況なんだからさ。という感じで、俺は、アーサーと色々と話した。外が暗くなるのも忘れて話まくった。