十四
「それなら、今日は一日ご一緒しませんか? デートって言うんでしたっけ?」
「えっ、それは……」
やばい、まずい、どうしよう……。アーサーは本気だ! ここで、デートなんていうのに乗ったら、後々大変なことになる……。
「えっと……。残念だけど……。俺、昨夜、寝ていなくてさ……。だから、部屋で休もうかと……」
よし! 体調が悪いアピールしたぞ! これで、きっと大丈夫!
「そうですか……。なら、部屋で構いません」
ちょっと待って! このままじゃ、王妃になっちゃうよ……。誰か助けてよ……。
「さあ、部屋へ戻りましょう」
アーサーが俺の腕を掴んでグイグイと部屋へ向かう。助けて!
「あの……。ついでに頭も痛いような……」
「それは大変です。早く部屋へ戻りましょう」
うぅぅっ。そのまま、アーサーに引きずられて部屋へ戻る。
「大丈夫です。私と結婚しようなどとは言いません」
「本当?」
「えぇ」
本当かな? まぁアーサーのことだから、嘘は言わないと思う。
「それじゃ、いいよ」
俺はベッドに腰掛ける。
「寝ていても構いません」
「あ、今寝ると、夜型人間になるから。頑張って起きてる」
アーサーがちょっと面食らった顔をしたが、すぐに元の表情に戻る。
「それなら、私は、貴女が寝ないようにしないとですね」
「うん。大変だよ」
アーサーが椅子に座る。
「ところで、貴女が使用したかいふくまほう? について、伺いたいのですが?」
「うーん……。まだ、完璧じゃないんだ……。大きい怪我とか病気の場合どうするか……。俺、医者じゃないから、分かんないし……」
アーサーは考える。医者という意味は分かる。だが、それでないとダメだというのが分からない。
「俺の場合、表皮や真皮をつなぎ合わせてるだけだからなぁ……」
表皮ろ真皮の意味が分からず、アーサーは考え込む。
「折れた骨ぐらいなら繋ぎ合わせられるけど……。それ以上になったら、お手上げだ……」
「なぜ、医者じゃないとダメなんですか?」
アーサーの質問に答える。
「医者じゃないと。不明瞭な部分が多いからだよ」
「不明瞭?」
俺は頷いた。
「病名が分からないと、俺の方ではなんとも……」
「そうなんですか……」
アーサーが再び考える。
「医者は、こちらの世界の人間でも大丈夫でしょうか?」
「え? 医者いるの?」
「数は少ないですし、金持ち専用なところがありますが……」
「でも、瀉血レベルじゃダメだよ?」