九
「んーっ。眠い……」
イシュタムを探してあまり寝て居ないせいか、眠い……。限りなく眠い……。朝なのに眠い……。もう、朝でもなんでもいいや。寝よう……。そうして俺はベッドへ横になると深い闇の中へいざなわれた。
目を覚ますと夜中だった。やばいな……。俺、生活時間が逆転したかも? まぁ、明日、アナトが起こしてくれるだろう……。俺は背伸びをして外へ向かった。うーんまぁ、俺、美少女だけどまぁ、なんとかなるか。強いし! 暗い闇の中、一人で歩いて行く。たまには、こういうのもいいな。こういう時間を持てたこと、ちょっぴりイシュタムに感謝。でもこんな時間に目が冴えたこと、ゆるさん! って気持ちも、もちろんある。あるいていると、前方に人影が見えた。特に気にすることなく歩いて行く。相手が男だっていうのが分かる距離に来た。だけど気にせず通り過ぎる。途端、急に相手の男が振り返り、俺の身体を羽交い締めにした。普通の美少女なら、ここで声も出ないんだろうけど、俺は違う。
「H2O」
水が、相手の男に降りかかる。相手が何事かと周りを見る。うーん。自分が濡れたくないからちょっと威力が小さすぎたかな……。
「N2 78.084 O220.9476 Ar 0.934……」
を気圧の高低差を利用して……。と結構、大きな風が吹いた。ちょっと驚かせるか……。
「CO→CO2」
ぽっと火が男に点いた。男は慌てて火を消す。その時、男が手にしていたナイフが落ちた。あれ? 俺ってもしかして……死にかけてたの? あのナイフでグッサリとやられるところだった? やっべー! 気を付けないと……。相手の男が手で火を消しながら走って行く。まぁ、追い払えたからいいかな? 俺は、そのまま歩いて行く。それにしても……何人いるんだ? 強盗……。もう、何人退治したんだか……。ゆっくり夜の散歩も出来やしない。しょうがないから、もう帰るかな……。いきなり、グッサリと刺されてら洒落にならん……。