八
イシュタムは悪びれもしていない。そうだ。そういう奴だった……。
「みんな……心配してたんだ……」
声が震える。
「ほえ~?」
「みんな、心配して探してたんだよ!」
串を口に咥えながら、イシュタムが不思議そうな顔をする。俺は、思わずイシュタムに抱きついた。
「心配したんだから……。勝手に居なくなるし……」
イシュタムの表情が申し訳ないものに変わる。
「……ごめん~」
謝罪を口にしたイシュタムは、口から串を取る。俺は、ふと感情が素に戻る。今は俺、女の子だし抱きついても平気だよな……。元の男の姿だったら危ないけど……。今は、美少女だし、イシュタムも美少女だし……。美少女×美少女で平気だよな? イシュタムの手が俺の身体に回される。うん。きっと大丈夫だ!
「そんなに~私の~必殺技の~心配してくれるなんて~」
「はぁ?」
ダメだ。こいつ……分かってない。そこへ、丁度よくアーサーが来る。
「えっ? 見つかったんですか?」
慌てて、アーサーが駆け寄った。
「新しい必殺技の練習をしてたんだって……」
俺は、切が良いということで、イシュタムから離れた。
「そうなんですか……。とりあえず、無事で良かったです」
「無事は無事だけど……こいつ、全然、反省していない」
イシュタムは、また不思議そうな顔をする。
「そう……なんですか?」
「そうそう」
アーサーが考え込む。
「まぁ、でも見つかったんですし、良かったです」
アーサー……。イケメン、マジイケメン! 「まぁ、とにかくもう疲れた……」
「そうね……」
アナトも俺に同意する。
「え~じゃあ~今日は~お休みってことで~」
「そうね……そうするわ……」
アナトが立ち上がり、部屋から消えた。俺も、これ以上こいつの相手をするのは疲れる。
「俺も……寝るわ……」
俺はそう言って、イシュタムのいる部屋から出ていく。なんだよもう……。心配したのに……。必殺技の練習だって! 俺の睡眠時間を返せ! 街中を探し回った時間を返せ! なんだか、安心したのか眠い……。まぁ、必殺技でもなんでも、無事で良かった、別の世界にふらっといってしまわなくて良かった。怒りよりも喜びの方が大きい。知らない間にイシュタムも仲間になっていたんだな……。
俺は部屋び着くとベッドへ腰掛ける。それにしても、何も言わずに行くなんて酷い。せめて。何か一言、言ってよ……。俺は溜め息を吐く。