六
「そうだけど……」
何かを決意した顔をアナトがした。
「とりあえず。蒼真を連れて行かないと……」
「俺は、イシュタムも一緒じゃないと嫌だ」
思わず、大きな声を出してしまった。そのせいかどうか分からないけど、アーサーが目を覚ます。
「分かった! イシュタムだけ、置いて行けないよ!」
俺は、アナトにそう言った。アナト冷たいよ……。なんで、イシュタムを置いていこうとするんだよ。俺は、アナトに背を向けて、自分の部屋へ戻る。アーサーが、何事かと言うような目で俺を見ていたが、ごめん……。今は余裕ない……。
「イシュタム……どこに行ったんだろう……」
俺は部屋に着くとベッドに腰掛けた。イシュタム、今からでも遅く無いよ。出ておいでよ……。俺は、イシュタムと最後に過ごした時間を思い出す。あのとき、眠いからってさっさと寝なければよかった。例え厨二な話でも、もっとちゃんと聞いていればよかった。やっぱり心配だよな……。探しに行くか……。
俺は、居ても立っても居られず、イシュタムを探す。宿屋を出て、周囲を見て回る。昨日と同じとこを探したって仕方が無いな……。そう思い、範囲を広げる。だが、見つからない。もう、本当にどこ行ったんだよ……イシュタムは……。もう少し、捜索範囲を広げてみようかな……。捜索範囲を広げて探して見る。やっぱり見つからない……。一体、どこに行ったんだよ! 暗くなるまで探したけど、見つからない。俺は仕方がなく宿屋に踊ることにした。
宿屋に戻ると、アナトが立ち上がり俺の方を見た。そして、がっかりしたように椅子にまた座る。そんなに心配しているのなら、なんで置いていくなんて言うんだよ……。俺はそう思い自分の部屋へ向かった。
「あーぁ、今日も見つからなかった……」
俺は、ベッドに腰掛けると、そう呟く。明日、アナトは本当にイシュタムを置いて行っちゃうのかな……。例え、そうだとしても、俺が行かなきゃ良いんだし……。うん、アナトが、何を言ってもイシュタムが一緒じゃないと行かないって言えばいいや。そうしよう。
俺は、今日たくさん歩いたせいか、なんだか眠くなってきた。大きな欠伸も出る。昨日は、寝たような寝ていないような、分からない状態だったし、もう限界かも? 寝る準備、何もしてないけどいいや。俺は大きな欠伸を一つすると、意識が暗い闇の底へと引きずられていった。