四
あ、まだ必殺技の話しだった……。助かった……。
「えー紅い薔薇?」
うん。適当に言ってみた。もう、流石に眠いし、切り上げよう。
「紅い薔薇か~。ブラッディ・ローズ~? とか~?」
「うん。そうだね」
イシュタムが考えている。
「もう、遅いから寝るよ……」
「あ~、うん~。もう少し~必殺技に付いて~考えてみる~。おやすみ~」
「はい。おやすみー」
俺は眠いのもあって、さっさと部屋に戻った。イシュタムがその後、どれだけ考えて居たのか知らない。
次の日の朝、イシュタムが居ない。どうせ、遅くまで厨二な必殺技の名前を考えていたんだろう……。
「おはよう」
俺は、アナトに挨拶をした。アナトがこっちを見る。
「おはよう。蒼真。ねぇ、イシュタム知らない?」
「んー。まだ寝てるんじゃないの?」
俺は欠伸をしながら答えた。
「それが、居ないのよ……」
「へっ?」
俺の朝の眠気が吹き飛んだ。
「え? だって……俺、遅くまで必殺技について語っているイシュタムを見たよ?」
「そうなの?」
「うん……」
アナトが考える。
「変ね……。朝ごはんの時間になっても居ないなんて……」
二人で考えて居るところに、アーサーがやって来た。
「ねぇ。アーサーは、イシュタムがどこへ行ったか知らない?」
「いえ。知りませんが……」
「そう……」
またアナトが考え出す。
「とにかく。イシュタムのことだから、お腹が空いたら帰ってくるって……」
「そうね……」
やっぱり心配なのかな? 最初の頃は、変な奴なんて思ってごめんよぉ。だって、躊躇なくアナトを丸太で殴っていたからさ……。
そんな風に、イシュタムに誤りながら朝ごはんを食べた。
「うーん……。これじゃあ出発出来ないわね……」
「ここに留まるの?」
もしかして、歩かなくても済む? なにが嫌かって。歩くのが一番、嫌……。
「仕方が無いからね……」
いやったー! このまま、イシュタムが戻って来なければ歩かなくて済む! でも、ずっとここに居るのは嫌だな……。せめて、帝都ぐらいの大きさが無いと……。それにしても、イシュタム、どこへ行ったんだろう? ちゃんと、お腹が空いたら帰って来るといいんだけど……。
「イシュタム……結構、食いしん坊だから、すぐに帰ってくるって!」
「そうね。そうに違いないわね」
俺とアナトがそう話している横で、アーサーが黙って聞いている。
「どうした? アーサー?」
「あ、いえ……。女性一人で心配だなと……」