二
あーぁ、俺に財力があれば、みんなと別れずに済んだのかな……。などと、無謀なことを考える。
「じゃ、私は寝るね」
「うん。おやすみ」
アナトは立ち去った。俺はアナトの見ていた外を見る。何も無い。当たり前か……。何かあったら大変だ。俺も寝ようかな……。
「こんなところで、何をしているのですか?」
振り向いた先に居たのは、アーサーだった。
「別に、外を見てただけ……」
うん……。別に嘘は言っていない。外を見てたから……。
「こんな時間に、何かありますか?」
「ううん。何もない……」
俺は改めてアーサーを見る。やっぱりイケメンだよな……。しかも王子様……。羨ましすぎるぜ……。
「そういえば、アーサー、俺に付いて来たけど、何か面白いことあった?」
「ありましたよ」
アーサーは、当然という顔をして答えた。
「まず、貴女が男だった。それに異世界からの転生者。そして、異世界の政治について色々と教えて貰いました」
「あははは……」
もう、乾いた笑いしか出て来ない。
「貴女は、色々な知識を持っている、もっと誇っていいのではないでしょうか?」
「そっかな……」
うーん……、アーサーてば、褒め上手。俺は照れながら答えた。
「私も、知らない政治を教えて貰ったし、貴女の魔法についても色々学ばせて貰いました」
「アーサーって、くにに有益なことばかり学ぼうとするよね?」
「それはもう、将来は国を抱えなくてはなりませんから」
「そうだね」
アーサーが少し考える。
「本当のことを言うと、悠真のお兄さんだから、守らないと……って、思っていました」
「そうなの?」
「はい。でも、私が守る必要が無いぐらい、貴女は強かったです」
「うん。俺、最強だから!」
再び、アーサーが考える。
「やはり、結婚しませんか? というよりも、近くで私を支えて欲しい」
「またそれ……」
アーサーが笑う。
「私は諦めが悪いもので……。国を良くするためなら、なんでもしますよ」
「はいはい。まぁ……気が向いたらね」
なぁ、王妃にでもなったら、財力も地位も手に入れられるんだよな……。マジでなっちゃおうかな……。ほら俺、美少女だし……。誰にも反対されないよね? ってのことを考えながらアーサーと話している。話題はもっぱら元の世界の政治に付いてだ。戸籍制度が特に気にいったみたい。まずは、帝都から試してみたいようなことを言っていた。
「じゃあ、もう遅いので、寝ますね」
アーサーがそう言って、自分の部屋へ向かう。