十八
「美味しいねこれ!」
「少し、持っていく?」
「いいの?」
「うん」
俺は、お茶を少し貰う。いや、正確には、お茶をくれたのは執事さんだが……。それでも、嬉しかった。俺とミーナは、一緒にお茶を飲んで、お菓子を食べて、晩ごはんまで食べた。いやー。美味しかった……、転生して、初めてじゃないかな……。あそこまで美味しものをたべたのって……。まぁ。執事さんが作っているというのも驚いたけど、執事さん……。コックになれば良かったのにとか思ってしまった……。
「今日は、ありがとう」
「私の方こそ、ありがとう」
「晩ごはん美味しかったよ……」
突然、ミーナが変な顔をした、当たり前か……。突然、何を言っているんだろうって思われてたりして……。だが、そんな顔をしたのは一瞬だけで、すぐに顔は普通に戻った。というか、笑ってる?
「でしょ。自慢の執事なんだ」
「うん、うん」
「また、食べに来てよ。絶対だからね!」
「うん。絶対にまた来る!」
名残惜しいけど、ここでお別れ……。このまま、ここにいることは出来ないし、バイバイをした。あーでも、あの美味しいご飯は惜しいな……。あれだけの為に、ここにいてもいいかも? なんて思ってしまった。まぁ、嘆いても仕方が無い。帰るか……。
帰る途中、空を見上げた。立派な月が2つある。そういえば、この世界に来て、ちゃんと空を見たのって、初めてかも? 月が2つって、いかにも異世界見たいだ。俺は上機嫌で夜道を歩いていた。しばらく歩いていると宿屋が見える。俺は、駆け込むように宿屋の中へ入った。
「あら、蒼真。おかえりなさい」
「おかえり~」
「おかえりなさい」
誰も心配してなかったの? 俺、殴られて死にかけたんだよ? 物凄い花瓶で殴られたんだよ?
「心配してなかったとか?」
「だって、その気になれば魔法を使えばいいし、そんなに心配はしてないかな……」
「そりゃ、そうだけど……。ちょっとぐらいは心配してくれても罰は当たらない思うよ」
「うんうん」
まるで心配していないようで、俺もどうでも良くなった。
「それで、話はついたの?」
「まあね。でも、すっごい花瓶で殴られて死にそうになったよ……」
「ふーん。それは、ご愁傷さま」
なんだよー! それだけかよ! もっとこう、大丈夫だった? 蒼真とか、危なかったわね……蒼真なんてないのかよ!
「んじゃ、早く寝ましょう。明日は、早いからね」
アナトはそう言って自分の部屋へ戻った。他の二人もそれに続く。俺も仕方がなしに部屋へ戻るころにした。