十三
えーっ、それいいな。俺も出来ないかな?
「ちなみに俺は?」
「蒼真は、もうこの世界の人間だから無理ね」
「えぇー」
そんな……そんなの無いよ……。俺は、ガックリする。
「んじゃ、早くここを出よう……」
「そうね。後、この街を立つのも早い方がいいかも?」
「うん……」
そうして、俺たちは荷造りをしてこの宿屋を後にした。
次の日の朝、早くこの街からおさらばしようと、準備をする。
「準備はいいですか?」
アーサーが訪ねてくる。
「うん!」
「では、出発しましょう」
アーサーの後につづき宿屋を出る。こんな朝早くに起きたこと無いからな……ちょっと眠いや……。
「おはようございます!」
「おはよう……って、え?」
そこには、昨日の女性が居た。
「な、なんで……?」
「なんでって、それだけ派手なオーラをしていたら分かるって」
「そ、そうなの?」
「そう」
どうしよう。バレてるよ……。
「アナト……」
Pレは、アナトに助けを求めた。だが、アナトはもう仕方が無いわね……。というような顔をしている。
「これからどこへ行くの?」
「え? いや……別に……。朝の散歩……?」
「それなら、一緒に行こう」
「え? いや、その……」
アナトを見ると、手を振っている。イシュタムも同じだ。アーサーに至っては、お辞儀をしている。いってこいってこと? 俺の腕を取り、女性が意気揚々としながら、宿屋から離れた。
「えっと、ミーナさんだっけ?」
「うん。そう」
まぁ、名前はこの身体も持ち主と一緒だからな……。間違えるはずが無いよ。
「あの……もう、魔法は見せたはずだけど?」
「見たよ」
「なら、もういいでしょ?」
「そうしたら、私も使える?」
え? 使える? って魔法?
「使えるって、魔法?」
「そう」
俺は考える。魔法って、本人の資質が大きいからな……。一応、教えてダメだったら諦めて貰うとか……?
「分かった。じゃあ、人目の無いところへ」
「じゃあ、うち来る?」
人目が無いところならどこでも良かったので、相手の家に行くことを了承する。
郊外の大きな家に着いた。
「ここ?」
「そうだよ」
結構、いい家に住んでいる。
「父親も母親もいないから、気にしないで」
「うん……」
居ない? どういうことだろう?
「父親も母親も事故で死んじゃった。莫大な遺産を残してくれたからいいけど……」
「あ、ごめん……」
つい、誤ってしまった。
「気にしないで」
「うん……」
先に進んでいく彼女を見つめる。
「ただいまー」
え? ただいま? 誰か居るの?