十一
「まって! まってってば!」
俺は、フードの女性を見た。
「なに?」
「私も連れて行って!」
「はぁ?」
いやいや、ちょっと、待ってよ。こういうちょっと変わってる? 人を連れて帰ったら、アナトに叱られる……。
「ねぇ? いいよね?」
「えっと……。あっ! そうだ! 私、ご飯を食べるんだった!」
嘘は言っていない。
「じゃあ、そういうことで!」
俺はすべてをうやむやにして、走ってその場から逃げ出す。しばらく走った後、立ち止まった。もう、ここまでくれば大丈夫かな? 俺は、行きを整えながら辺りを見回した。
えぇー! 居るよ、傍に居るよ……。あのフードの女性が……。なんでなんで?
「朝ごはんはどこで食べる?」
俺、逃げたよね? 逃げたのに。なんでここにいるの? 俺はも一度、走った。今度は、人混みの多い場所を選んで走った。心持ち、少し長く走った気がしたので、足を止める。ハアッハアッと息を切らしながら、辺りを見回した。今度は居ない? ふぅ、良かった……。たくさん走ってお腹も空いたし、たくさん食べよう。俺は目の前にある、菓子のようなものを頼んだ。
「それ、美味しい?」
「どうだろう? 初めて食べるから分かんない」
ん? 誰だ? 俺は、改めて声のした方を見る。げ、あのフードの女性が居る! なんで? 巻いたはずじゃあ……。
「私も食べてみようかな?」
「う、うん……」
逃げられない……。逃げられないよ……。
「帰る……」
俺は、とぼとぼと歩きはじめた。
「え? もう帰るのかい?」
「うん……」
逃げられないなら、帰るしか……。
「えー。美味しいのに……」
俺は無視して方向をかえる。どうしよう……。こんあ人を連れて帰ったら、アナトになにか言われるかな……。俺は盗み見するようにフードんp女性を見る。女性は、変わらず何かを食べている。
宿に着いた。もう、どうにでもなれ……。
「へーここに泊まっているんだ」
俺は返事もせずに黙っている。
「と、いうことは、この街の人間じゃないんだ」
ふと、アーサーがこちらを見ている。
「どこに行っていたんですか? それと、そちらの方は?」
「えーと……」
返答に困っていると、奥からアナトが現れる。
「ちょっと蒼真! 私の財布から、お金を抜き取ったでしょう?」
「アナト!」
俺はアナトに向かって助けを求めるように呼んだ。
「蒼真? ってか、誰?」
泣きそうになりながら。アナトを見る。
「こんにちは」
フードの女性が挨拶をする。
「こ、こんにちは……」