六
俺は、ワクワクしながら歩いた。歩いた。歩いたんだけど、いつ着くの? もう、辺りは暗くなってきたよ? ねぇ、いつ?
「アナト……いつ村に着くの?」
「もうすぐよ」
「さっきから、そればっかり……」
「そう?」
ダメだこりゃ……。俺、もう無理……。
「着いたわよ」
本当? 本当に着いた?
「今夜は、ここで過ごしましょう」
やったー。やっと着いた! アナトがこの先って言ってから、何時間歩いたことか……。ここでも、アーサーが以下略……。
「ねぇ。アーサーは何でこんな村でも宿が取れるの?」
「帝国騎士団員だからです」
「ほえ?」
騎士団だと、こういう小さな村でも泊まるところが確保出来るの?
「まぁ。絶対的な身分証を持っているということです」
「ふーん。そっか……」
日本で言えば、役所の人みたいなもんかな? まぁ。何にせよ、寝泊まりに不自由しないのは、いいことだ。俺は、安心して寝る準備をする。
うーん……。昨日、歩きすぎたせいか、今日はちっとも歩いている気がしない……。もう、疲れた。休もうよ……。というのをアナトに提案しようとしたところで、アナトが立ち止まる。
「どうしたの?」
「え? あ、ちょっと……」
ん? 向うから誰か歩いてくる? 女の人? 誰だろう? なんだかアナト、あの人を怖がっているような?
「あ~上司だ~」
嬉しそうにイシュタムが手を振る。相手の女性も手を振り返した。段々と近づいてくる。肩までのヘアを後ろで一つに纏めた黒髪のスラリとした女性だ。
「上司~」
イシュタムか上司と呼んで抱きついた。
「いつまでも子供見たいだな……」
上司がイシュタムを抱きしめた。
「い……イル様? なぜここに?」
「うーん。ちょっと暇になったからね。噂の子を見にね」
「あ、はい!」
「この子が秋鹿蒼真?」
「です」
なんjか、アナトが慌てている?
「で、こっちのイケメンは?」
「あ、そちらは、蒼真の世界のことを知っているので、護衛とかに良いかなって……」
「ふーん。そう」
ジロジロとアーサーを見る。
「はじめまして。アーサーと言います」
アーサーは、たじろぎもせずに挨拶をした、すごいな。さすが王子様。
「あら、礼儀正しいのね!」
「えぇ。それはもう!」
「まぁ、いいわ。それより、書類を壊しちゃったんだって?」
「ひっ!」
アナトがびくりとした、
「だ、だから……蒼真を連れていこうと……」
「まぁ、もう一度、あれは作れないしね……」
「はい……」
「じゃあ、待ってるわ!」




