表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/123

楽園解放 五

 アレクセイはヨミの後処理を請け負い、ドミトリによる征服を終わらせ、国内から海賊を一掃すると王位を継承して国を建て直した。

 今回のような事が起こらないよう、海賊達が停泊する場所や、海賊達が島から持って来る資源などと取引する市場をあえて西の海岸沿いに作り、他の場所から本土に上陸するのを禁止し、警護の兵力を西に集結させた。本土の治安を保ちやすくなったうえ、引退した海賊もここで商売を始める事ができるようになり、お互いの利益になるとして歓迎された。この措置によりアレクセイは海賊達との関係を良好に保つことに成功し、殺人などの険悪な事態を防ぐ事ができるようになった。商売ができると担保された海賊達の中からは漁師に鞍替えする者が増え、海賊達は全体的にはいわゆる海の男といった印象になった。

 しかし海賊の数が増えて少しずつ北へ進出するようになると、時折遭遇する北世界からの船を襲う者が増えた。こうして北世界と、海賊達が普段停泊する小さな島々とその東にある大きな島との南世界に分断され、南世界の関係は百年後、女海賊ジョセフィーヌが王を誘惑して王政に食い込むまで続いた――。


 母親が食器を洗って一息つくと、息子に本の続きを読み聞かせ始めた。

「じゃあ第二章に行くわね」

「うん」


『第二章

 ドミトリが海賊達の親分になって島に帰って来ると、ドミトリは父親に会いに行きました。そこには弟のアレクセイと妹のヨミもおりました。

「父上、お話があります」

「どうしたんだ?」

「私はこれから海賊達を率いて、外の世界を探索したいと思っています」

 ドミトリはこの島を拠点に冒険の旅に出たいと説明しました。

「そうか……分かった。止めはしない。昔からお前はわんぱくだったからな。この島はお前には狭すぎるかもしれん。西側の港をお前達のために開放しよう。島の者達にも協力してもらいなさい。もちろん仲良くするのだぞ」

「はい。この国のためにも必ず成果をあげてみせましょう!」

 両親もアレクセイもヨミもみんながドミトリを励ましました。

「海賊達を仲間にしちゃうなんてやっぱり兄さんはすごい! 頑張ってください兄さん!」

「気を付けてね」

 母親は立ち上がり、ドミトリの顔を両手で包みました。

「無理しないでね。必ず生きて帰って来るのよ」

 ドミトリは力強く頷きました。

 こうして西側の港は海賊達のために酒場やお店ができて商売をするようになり、港は賑わうようになりました。


 ドミトリは海賊達を大きく三つに分けました。一つは拠点で補給や船の修理などを行うグループ、もう一つは島の周りで活動し、漁などをしながら、もし北世界からの侵略や商船が来たら戦うグループ、そして自分が乗り込んで北へ旅立つグループです。

 いよいよ冒険の始まりです。ドミトリは大きく息を吸い、自分達の船も含めた五隻の船へ向かって叫びました。

「出航!」

 ドミトリ海賊団はドクロの旗を掲げ、大海原へ繰り出したのでした。


 どこまでも広がる青い海を進み、嵐の夜が来れば仲間と協力して波を乗り越え、見た事も無いような大きな魚を釣って食べました。どれも本土の暮らしでは無かった新鮮な経験でした。

 数日後、ドミトリ海賊団は他の国の商船に出会いました。

「乗り込むぞ!」

「おお!」

 ドミトリ達がその船に乗り込むと、彼等は戦う事無く投降しました。

「あんたらは北世界に進出しようとしているのかね?」

 彼等の問いかけにドミトリは頷きました。

「もちろんだ。俺は南世界の王子だ。海賊達を率いて世界中を冒険するんだ」

 ドミトリの反応を見て、商人達はやれやれと言った調子でお互い肩をすくめました。

「何がおかしいんだ?」

「あんたら海賊が北側に来られなかった理由を知らないのかね?」

「理由? 北に行けない理由があるのか?」

「そうだ。あの御方が南からやって来る海賊を倒してくれるおかげで北世界は平和に暮らしているんだ」

「あの御方?」

「あんたが本当に王子なら、悪い事は言わないから海賊の船から降りて、普通の船で冒険する事をお薦めするよ。一緒に沈められてしまうからな」

「そんなにそいつは強いのか?」

「強いとか弱いとかそんな話じゃないんだ。海であの御方にかなう人間なんていないよ。なあ、俺達の荷物を奪わずにこのまま解放してくれないか? そうしたら俺達もあの御方には報告しないでいるからさ」

 そう、ドミトリはオルスの話が本当だという事を、この世界には魔法使いが本当にいるという事を知らなかったのです。しかしドミトリはその人と戦ってみたくなりました。

「よし、俺はそいつと戦ってみたい。お前達は解放するがそいつに報告するんだ。王子率いるドミトリ海賊団がお前に挑戦するってな」

 第二章、終わり。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ