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楽園解放 一

 ある母親が本を開き、子供に読み聞かせた。


『ドミトリの大冒険。第一章。

 昔々、ある所に大きな島がありました。青い海に囲まれ、暖かくて木の実が豊富、綺麗な湧き水もあり、人々は小さな国を作って幸せに暮らしていました。

 それでも中には悪い事をする者達もいました。王様は皆で相談し、悪者達は島の外に出て行ってもらう事にしました。周りの小さな島々でも生きていくのには困らないので、悪者達はいくつかのグループに分かれ、周りの島々をそれぞれ自分達の縄張りにして、ときどき船に乗って皆がいる島に来ては物を奪っていく、いわゆる海賊として暮らすようになりました。

 王様は民の為に力をつくし、結婚して二人の王子と一人の王女が生まれると、三人は元気に育っていきました。兄は活発で武芸を好み、弟は優しく勉学に励みました。妹は静かでおしとやかな美しい少女でした。国民は三人を見てこの国の未来は明るいだろうと思っていました。


 三人が成長すると、聡明な弟と美しい妹は民に好かれましたが、乱暴で負けず嫌いで島一番の武芸家となった兄は民には慕われませんでした。

 ある日、ときどき島に来ては、王子である自分より偉そうに振る舞う海賊達に我慢ができなくなり、兄は海賊達を討伐する事にしました。しかし、穏やかに暮らして来た民は海賊を恐れ、兄に付いて来る兵士はわずか数人でした。

「不甲斐ない! いいだろう、私がまず先陣を切ってやる!」

 兄がそう言うと、王の相談役である占い師のオルスが言いました。

「お待ちくだされ。お父上に王子を止めるよう頼まれました。今は海賊を退治する時期ではないと思われます」

「なぜだ? 海賊を退治するのは早ければ早いほどよいではないか!」

 オルスは首を振り、水を張った器の上を泳ぐ三枚の葉っぱを見て言いました。

「私はこの葉っぱ達で世界の流れを見て占います。この世界は神樹、ユグドラシルの葉の上にできております。ユグドラシルの葉とこの一番大きな葉っぱが繋がっているのです。そしてご覧ください、この二枚の葉っぱは魔女達と繋がっております」

「魔女?」

「世界を表す大きな葉っぱが緩やかに動いていて、魔女達の葉は動かない。つまり魔女達は今動く気配がありません」

「それがどうした? またいつものヨタ話か」

「私達に力を貸してくれる魔女はまだ現れない。世界は彼女達の力を借りなければその姿を大きく変える事はありませぬ。王も小さな被害であれば……変に事を荒立てない方がよいとのご判断です」

 兄は鼻で笑った。

「はっ! 情けない! それでも王か? 魔女? そんな怪しげな者達の力など借りずとも海賊共を退治してみせよう! 俺が一番すごい事を見せてやる!」

「王子、どうかお待ちくだされ」

「くどい!」

 兄はオルスの言う事に耳を貸さず、海賊退治に出かけて行きました。』

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