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フレイムタン 十五

 最初に異常に気が付いたのはビルギッタの南西のカルの街にいる商人達だった。リア国からの荷物が全く届かない。連絡を取ろうとした商人がリア国に踏み込み、灰になった大国に気が付いたのだった。商人達のグループの青年ニックは、仕事を取り仕切っているカルの街の貴族、ジャミルに報告した。

「何? 本当か?」

「ええ本当です! リア国は滅んだようです! 全てが灰になって……。リア国からの荷はもう届きません!」

 ジャミルは顎を手でさすった。ニックは短い茶髪を手で後ろに掻き上げてジャミルに詰め寄った。

「一体どうなってるんです? この前ビルギッタの東にリア国軍が現れましたよね?」

 ジャミルは椅子に座ると葉巻に火を点けた。

「報告によるとリア国軍は何者かと戦闘になり全滅したらしい」

「そしてビルギッタの今の当主はジン様です。カイル様とロキ様はどこへ消えたんでしょう?」

「分からない。調査を行う必要があるだろう。一体リア国に何があったのかをな。とりあえず西のドーン国から食料だけでも確保してくれ」

「分かりました」

 ニックは肩をすくめた。

「あの焼け落ち具合はただ事じゃありませんね」

「ああ。常人の者ではないかもしれん」

「……? 失礼します」

 ニックが出て行くとジャミルは机にある別の報告の紙を見ていた。ロキの死体がフィーンで見つかった事は既に承知していた。

(まるでレオナルドが暴れたような跡だが……カイルが以前、ロキは魔法使いだと言っていた。ロキがリア国と戦ってフィーンで相討ちになったという事か?)

 ジャミルは静かに葉巻をくゆらせた。

「何であれこれで外からの邪魔者はいなくなった訳だ」


 暫定的に当主となったジンと補佐役のシャロンのもとに大臣バズがやって来た。

「失礼します」

「何だいバズ」

「カルの街の商人のニックが謁見を申し出ています」

「通してくれ」

 青年ニックが謁見の間に通された。

「ご機嫌麗しゅうジン様、シャロン様」

「やあニック。今日はどうしたんだい?」

「先日、リア国からの荷が届かなくて商人が向こうまで行って来たんですが。どうやらリア国が滅んだようなんです」

「知ってる。僕も大臣に聞いたんだ」

「一体何があったんです?」

「東からリア国軍が現れて、カイルおじさんと父さんがリア国に向かったのは知ってる。そこから先は僕は色々あっていなかったから分からないんだけど……兵士も動いていたから父さん達が戦って撃退したのかも。カイルおじさんが戻って来ないから今は僕がここに座っているけどね」

「そうですか」

 ニックはジンとシャロンを交互に見た。

「ともあれビルギッタの物資も不足するでしょうから、ドーン国との貿易を活発にする予定だとジャミル様が」

「分かった、ありがとう」

「失礼します」

 ニックは出て行った。

「魔女の話が本当ならカイルを探さないといけないわね」

「うん。ジャミルさん達にも協力を頼まないと」

「私達の生き残りを賭けた総力戦になるわ」

「バズ、他の街の貴族達を呼んでくれ」

「分かりました」

「父さんについて何か聞いてる?」

「いえ、現在調査中です」

 ジンはため息をついた。

「父さんどこ行ったんだろう?」


 東区の門の近くでニックがカルに帰るために荷馬車の様子を見ている時、配給をもらおうと並んでいる若き母親が視界に入った。

(赤ん坊も抱えて大変だな)

 ニックは母親の服が煤だらけなのが妙に気になった。直情的なニックは思わず母親に声を掛けた。

「あの……」

「はい?」

「大変そうですね、良かったらご飯を食べる間だけでも面倒見ましょうか?」

「え? あ……すみませんでも……」

「いいからいいから」

 ニックは赤ん坊を抱えて一緒に食事をする椅子に座った。

「よーしよし。それで、どこから来たんです?」

「私は……リア国から来ました」

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