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大根王子 十一

 アルベルトは野盗のアジトから北に向かい、ウォーケンが治めるノービスに街に着いたのは夕方頃だった。ノービスは現在の領主ウォーケンの館を中心にすっきりと区画が整理されていて、東に住宅街と農業区、西に商業区、北が工業区となっている。アルベルトは武器防具の補充のために街で大根やドレッシングをいくつか購入し、ノービスの中心にあるウォーケンの館へ向かった。館の敷地の前で兵士が二人花壇に座って退屈そうに話していたが、アルベルトが近付くと面倒くさそうに槍を交差させた。

「止まれ」

「わたしはファルブル家の長男アルベルトです」

「どうぞお通りください!」

 兵士はファルブル家の名を聞いただけで震えあがり、槍を即座にどかして自分も横向きに直立不動の姿勢を取ってアルベルトを通した。

 ウォーケンの館は敷地もかなり広い。庭園の噴水を通り抜け、館に入ったアルベルトは子供の時に見たことがあるウォーケンの執事が館の手入れをしているのを見つけ声をかけた。

「すみません、ランドさんですよね? アルベルトです」

「おお! アルベルト様! お久しぶりでございます。大きくなられましたなぁ!」

「お久しぶりです。実はウォーケン様にお話したい事があって訪れたのですがどちらにいらっしゃいますか?」

 ランドはキョトンとしてアルベルトを見た。

「アルベルト様はご存知ないのですか? ウォーケン様は今朝ヘルデに御出陣なさいました。なんでも海賊に占拠されてしまったとの知らせを受けたとのことで」

「ええ!? もう向かわれたのですか!」

「はい。ウォーケン様はほぼ全ての兵を率いていきましたので苦戦する事も無いでしょう。守りが堅い事が有名なヘルデですが海賊相手に遅れを取るウォーケン様ではございません」

 アルベルトは安心した。これでヘルデの騒ぎもすぐに鎮圧されるだろう。ランドにカタリナの事も頼んでおくことにした。

「ランドさん、実はヘルデの襲撃の時に僕はあの場にいたのです」

 ランドは目を剥いた。

「なんと! そうだったのですか! よくぞご無事で!」

「それでその時にカタリナという女性とはぐれてしまったのです。王都で暮らし始めた時からお世話になっている鍛冶屋の娘です」

「なるほど、王都を追放になられて街で暮らしていたと聞いておりましたが。その方の安否を確かめればよろしいのですね。わかりました。アルベルト様はこちらにご滞在ください。部屋をご用意いたします。今からヘルデを通って王都に戻るのは危険でございます。ウォーケン様もヘルデを制圧した後にこちらにお戻りになるでしょう。緊急でなければその時にご用件もお伝えなさってください」

「ありがとうございます。お世話になります」

 アルベルトはやがて客人用の部屋に通された。客間とはいえさすがに領主の館、家具や調度品も上品な物でまとめられている。アルベルトは担いできた鎧、大根の装備をベッドの横に置き、ベッドに体を投げ出した。これで一段落がついた。ウォーケンが戻るのを待ち、野盗もろとも捕虜を殺害した不穏な集団の事を報告して、カタリナの安否を確認して王都に戻れば全て解決だ。アルベルトはすぐに眠りに落ちた。

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