蜘蛛の糸
新素材の話ではありません。
こんにちは〜! 聖属性エッセイスト、ひだまりのねこですよ。
最近は外食する機会もすっかり無くなり、早くワクチン接種したいなあと思っている今日この頃。クリスマスあたりには行けるかな〜?
さて、今日は、そんな飲食店でのお話。
飲食店に入ったとき、あなたはまず何処を見るだろうか? テーブル? 厨房? 店員? それともスマホの画面だろうか?
私はまず床を見る。
高確率で迷い込んだ虫がいる。
憐れな迷える子羊たちは、ピカピカに磨かれた床に足を滑らせながら、なすすべも無く、恐ろしい巨人どもに踏み潰されてゆくのだ。
足元を見ろ、潰すならせめて意思を持ってやれ。破壊神たる自覚を持ってくれ。
くっ、駆逐してやりたい……。力が欲しい。
だが、私に何が出来るだろうか? せいぜい出された料理をありがたく美味しく食すだけ。
聖属性の私にとって、注文した料理がすんなりと出されることは稀だ。たいていは忘れられているか、頼んでもいない料理が来る。
注文した料理がちゃんと出される。それがどれほどありがたいことか、感動することか。
そんなとき、私はすかさず聖属性の飲食店に認定する。おそらくは店長が聖属性の可能性が高いから。また来ようと心に誓うのだ。
話が逸れてしまった。
店内の虫を見て見ぬふりなど、私には出来ない。ただしGは除く。やつらに迷いはない。好きに生きるがいい。アイコンタクトで挨拶程度は欠かさないが、かといって触れ合うほど親しいわけでもない。
もちろん店内のことに私がしゃしゃりでるのは良くないだろう。他のお客様の迷惑にもなるし、明らかな内政干渉だ。
だから私は極秘に救出作戦を実行する。
店内において、私は大使館だ。治外法権万歳。
さあ虫たちよ、私に逃げ込むのだ。私と一緒にこの危険な世界から脱出しようではないか。
私はあらゆる方法を駆使して、彼らに蜘蛛の糸を垂らす。さあ掴め!! 女神に後ろ髪はないのだぞ。
しかし、多くの場合、上手く行かない。おそらくは人間不信に陥っているのだろう。無理もない。彼らから見れば、私も立派な破壊神のひとりにすぎないのだから。
だがな……私を舐めるな! それぐらいで諦めてたまるかよ!!
物を落とした振りをしながら、私は強引に身柄を拘束する。
許せ……これしか方法がなかったんだ。恨むなら恨んでくれても良い、大丈夫、私は慣れている。
「ごちそうさまでした~」
店員に見つかりやしないかとドキドキしながら会計を済ませ店を出る。
少し歩き、大きな樹木か茂みを探す。周りに人がいないことを確認してから、そっと彼らを解放する。
少しだけ戸惑った後、一目散に去ってゆく姿を見るととても安心する。自己満足なこともわかっている。でも、これが私だ。他の生き方など出来ない。
ミッションコンプリート。さあ、仕事に戻ろう。