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黒28

 何が起こっているのだろうと、ため息をつく。


 これまで、自分に対して危害を加えてきたことには皆、黙認していたのに、あの身の変わりようと。

「浅はかな行動とは言え到底見過ごすことはできぬ」だったか。

 宰相も、己の娘に対してはあのように甘いのだな、と思い、いや、と首を振る。己の利となることに関しては、あのように、見過ごせぬと言うだけなのだろうと。


 そもそも、自分が、マーガレット=アルギランセマムに危害を加えようと思うわけがないではないかと、それで苦しんだ身であるのに、と考え、ふとカルミア=ラティフォリアを思い出す。

 彼女は本当に、自分に危害を加えようとしたのだろうか、と。


 それはこれまでも何度か考え、だが、実際そのようになったのだから、と何度も諦めた。

 けれど、もしも、カルミアが無実であったならば、今の自分の状況と同じではないか、と。

 皆に認められてはいなかったが実質婚約者であったシャルロッテと、皆に認められた婚約者候補であったカルミアがいなくなった現状を。


 そもそも、あの事件は、カップがシャルロッテのみ違うということを知っていれば、カルミアではなくても、誰にでも可能だったかもしれない。あの茶会の場にいないものであったとしても。


 そうであったならば、真犯人はまだ自由でいて、その者が、今回のことを企んでいるのではないだろうかと。


 だが、正直なところ、自分を害する者の心当たりなど、シャルロッテにとっては有りすぎる程あった。

 それこそ、カルミアがもし無実であったならば、自分をどれほど恨んでいるだろうかと。それから、当時茶会に参加していただけのものも処分を受け、同様に恨んでおろうと。個人的にお礼を申し上げていた方々もあれ程までに恨んでいたとはと。


 一体誰が自分の無罪を望むと。


 動かぬベットのみの部屋で天井を見上げながら思う。


 これからどのような未来があろうとも、アルの姿を見ることはないのだろうなと。


 この、地面の下にある硬い扉の小さな部屋から見上げるのは冷たい目か、暖かな泪か。


 屈せぬ、絶対に屈せぬとシャルロッテは改めて誓う。

 簡単に、王手はかけさせぬと。


 ふと百合の香りを思い出す。エリヌス=ロベリア。かつて、彼女は、旧家の1つ、ロベリア家のとても美しい娘でありアルフォートの婚約者であった。

 それは政略的なものであったらしいが寄り添う姿は仲睦まじく見えた。だが、その後、良からぬものによって、散り、枯れた。アルフォートのショックは大きいようであった。というのも、当時、彼は、王になるものと認められて以降、婚約者のみならず、彼と近しい者は、悪しき者に、利用されたり、排されたり、また、彼自身も残酷な目に遭っていたようだった。

 その様子をシャルロッテは、遠くで見ていた。

 他人の命を奪うようなことまでするか、と、墓場で呟く彼に自分は、突き放したのだった。

上の立場に立つのならば、大儀だと言ってのけよと。そして、自分も誓った。それなら、御身を守る冷たく堅き石となると。

 それ以降、アルフォートは婚約者を選ぼうとはしなかった。勘違いさせる女すら出ぬほどに。


 そういえば、ロベリア家についての噂はいつのまにか、聞かなくなったなとふと思う。娘を失ってから、よろしくない方向へ思考が傾いていたようなので、何かあったのかもしれないと考える。


 そして、この前、ラティフォリア家がなくなった。ラティフォリアは旧家の中では比較的穏健派であったのになぜという気持ちがシャルロッテの中では強い。特に、カルミアの父親は、立て直したいと思っていたのだから、王家に楯突くようなことはするまいと。自分が関わっていなければ、それこそ噂のように、疎ましく思ったアルフォートが失態を誘ったようなことを信じてしまいそうなくらいに。そうなると、あれは、カルミアやラティフォリアの真意によるところではない事件だったのか。


 今はアルギランセマム家のみ。これは偶然によるものか、それとも、故意によるものか。シャルロッテは考える。


 この一連の事件が故意に起こったものだとすれば、アルギランセマム家による犯行なのだろうか。

 だが、あの宰相がか? と首をひねる。まるで降って沸いた幸運のように喜ぶ姿からすると、考えにくいと。そもそも彼は臆病な性格であるように思えるから、自分から何かを起こそうとしないだろう。だからこそ、今まで立場を守ってこれていたのだと。

 だとすると。


 どのような者が犯人だとしても、この一連の事件は、旧家の関係する事件であるように思えていた。

 

 そして、自分は、このまま、地に埋もれるのであろう。


 そう考えて、しばらく過ぎた頃、シャルロッテは呼び出された。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


  王家からの突然の呼び出しだと告げられ、準備もそこそこに家を出る。

 逃げられぬよう周りを固められながら連行される。そのようにされなくともシャルロッテには逃げるつもりなど毛頭なかった。

 もう二度とこの家には戻れぬかもしれぬという予感があった。


 シャルロッテはいつぶりか、と跪きながらアルフォートの姿を見上げていた。


「シャルロッテ嬢、婚約関係を終了させよう」


優雅に微笑み宣言する王子アルフォート。そこに寄り添う1人の女性の姿


 マーガレット=アルギランセマムだった。


今日も読んでいただきましてありがとうございます。

ぶっちゃけ、これまでのまとめシーンです。

これらの葛藤もやっぱり数日間くらいかかってるイメージでお願いします…。

最後のは覚えてらっしゃったら光栄です、第一話の序盤です。

次は、先に謝っておきます。ごめんね!

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