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黒27

議会の部屋は会議室くらいの広さで。

会議室にもよるけど。

 シャルロッテが連れられてきたのは、議会の部屋だった。


 異様に人数が少ないと思いながら面々を見ると、見事に、旧家と彼らを支持するものばかりであった。

 そして、彼らは糾弾する。


「マーガレット嬢を害した罪を問う」と。「罪を認め、謝罪すれば放免してやろう」と。

シャルロッテは、どこかで聞いたような話だと、心中で思いながらも、マーガレット=アルギランセマムについては名前だけしか知らない。確か、人形のように美しい娘だという話は聞いたことがあった。母親の美貌を見事受け継いでいて、青年になる前から、さぞかし美姫になるであろうと期待されていた。

 だが、シャルロッテは彼女には会ったこともないし、もちろん、危害を加えたことなどない。と思いながらも、

「存じません」

と一言答える。と即座に「嘘を申せ」と鋭く追求の声があがる。

シャルロッテは、

「いつ、何時、どのような状況で行なわれたことなのか存じませんが、わたくしは、ここのところ療養しておりまして、王宮から出ておりません」と答える。

議員の一人が、

「それを証明するものはおるか」と問う。

シャルロッテは冷静に、

「護衛や侍女たちがよく知っておりましょう」というが

納得せず「脅せば良い話だ、いくらでも証言を偽れよう」と証人も呼びもせずにいう。

「それに、自ら手を汚さぬ方法などいくらでもあろう?」と笑う。


ああつまりこれは、ただ追求し、それを認めるまで続けるものかと納得する。だが、屈するわけには行かないと思い、


「そのような証拠はございますの」

と問うと、


「そのように命じられたと証言するものがおる」と答える。「シャルロッテ嬢に脅されていた」と。

「ではその方をお呼びになって」

というと、

「極度に恐れている」などと言って呼ぶつもりはないようであった。本当に居るかどうかも怪しいが、

「その方がおっしゃっただけではなくて?」というと、

「実際やっていたのであろう」と追求する。

ああ、あの面談のことかと思い出す。

「あら、わたくしは、ただお話をさせていただいただけですわ」といい、「それとも、個人的にお話をすることも許されませんの」としれっといってみせると。

議員たちは忌々しげに睨みつけた。


「わたくしは他人を害すようなことを行なっておりませんし、誰かにそのように命じたこともございません。ですので、行なっていないことを認めるつもりもございません」と宣言する。


くっと議員たちは黙り込み、睨みつける。

「認めないと申すなら」議員のうち1人が「あの者をこちらへ」と外へ声をかけると扉が開かれ、一人の人物があらわれた。


 現れたのはマーリン家の現当主でありシャルロッテの父親であるコージー=マーリンであった。

 どういうつもりだろうと、シャルロッテは見つめていると、コージーは一言、

「此度のこと、大変申し訳ございませんでした」

と告げ、深く頭を下げて謝罪した。


 その後、処分の決定をくだされる。

 あの様子では、死罪にでもそれに近いものにでも執行しそうな勢いであったが、意外にも軽く、しばらくマーリン家で慎むようにというものであった。つまりは、自宅で謹慎する処分という形である。

 その間に、余罪を作りあげて、どこぞの遠方へと飛ばし、王都へ近寄れぬようにするのであろう。

 と悟っていた。


 マーリン家に戻ると父親が一瞥する。

「まさか、お前がこのような形で帰ってくることになるとはな」

と。

 シャルロッテは一言申し上げねばと思い、

「わたくしはあのようなことしておりませぬ」

と言うと、コージーは「黙れ」と一喝する。


「したか、しなかったではない、できたであろうということが既に問題であるのだ」

と言う。「実際いろんな娘から陳情があがっているのだ」

と忌々しげに手紙を放る。

「シャルロッテ様から命じられた。」「シャルロッテ様に脅されていたのだ」

と書いてあるのを一瞥し、シャルロッテは、

「父親はそのような情報を間に受けられたと」

と問うと、

「シャル、お前ならできよう。」

とわざと昔のように愛称をつかっていう。「相手を脅し、意に反することをさせることが得意であったではないか」と。

「そのような軽挙妄動をこのシャルロッテ=マーリンがするとお信じになられたと。」

強い怒りを込めて言うと

「恨みがあろう。私に。」と的外れなことを言い始める。「私だけではなく、皆に、この国に、この仕組みに、全てに不満に想っておろう。」とわかっておる、というように言う。「当時は、私も気持ちが舞い上がってしまって考えも及ばなかったが」と語り始める。「あの時、お前を跡取りから外したのは失敗であった」と。シャルロッテは何を今更と思う。そしてさらに続ける「あれは、もう少し後にすればよかった」と。「そもそも、私は、ゼロが育つまでお前を残しておきたかった。だが、あの時はマリーが」

とシャルロッテの母親の名を出し、「お前の人生もあるというから、このようにしたのだ。だが、お前がいなくなってから、今やマーリン家など恐るるに足らぬと皆思っておる。」ため息をつき「そして、お前の婚約についても、皆はいう。いやあめでたい、快挙であると。だが、いくらで買った娘なのかと。」


珍しくベラベラとしゃべることだと思いながらシャルロッテは黙って聞いている。これまで、この男からは短く命令する言葉以外聞いたことがなかった。そして、いつのまに、このような愚かな者に成り果てていたのかと軽蔑したように見下ろす、その目をみながら「シャルロッテ」と名を呼ぶ。

「お前のことだからいずれ、婚約者の座を辞するつもりであったのだろう。」

それは事実であった「それが、今なのではないか、現実的に考えて」とわざとシャルロッテの口癖を真似て言う。

父親の真意がつかめず、シャルロッテが答えられずにいると、


「やはり、お前など生まれるべきではなかったのだ」と呟くように告げて、重い扉が閉まりガチャリと鍵がかかる音がした。


 窓もない部屋で、シャルロッテは静かに考える。

本日も読んでいただきましてありがとうございます。

この辺すごく難しかった……。

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