黒26
ブクマ、評価等ありがとうございます。
ほとんど書き終わって見直してるところなのですが、最初から読み直すと冷や汗たらたら…。
読んでいただいてる皆様に本当に感謝です。
宰相は焦っていた。
あの女は、こちらがどのような提案を出しても、わたくしの一存では と繰り返す。意思など聞いておらぬのだ! とダンと自分の机を叩く。その瞬間、紙が崩れ床へ落ちる。その様子すら己を馬鹿にしているようで、忌々しく思えた。
他の手を考えねばと考える。だが、これまで、あの女を亡き者にしようとしたり、危害を加えようとした者の末路を見てきた。あのラティフォリア家ですら、と己の身をぶるりと震わせる。
アルフォート様は恐ろしいと。若造の癖にと。
だが、宰相にとっては好機でもあった。今まで、皆から慕われていたラティフォリアがいなくなってから、旧家の力全てがアルギランセマムに集まった。そして、ちょうど良いことに、娘のマーガレットも成人を迎える。つまりは、アルフォート殿下へ嫁がせることができるようになったのだ。
これは全て彼にとって、今だと言っているように思えていた。
今こそ、アルギランセマム家が日の目を見る期を迎えたのであると。
そんなある日、宰相のもとへ1つの報告が舞い込む。
そのようなこといちいち申すなと言いかけて、ふと彼は考える。これは使えるぞと。彼にとっては吉報のように感じていた。
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「ふふふ」
女は微笑む。これでようやく、悲願が達成できると。
盤上にことりことりと駒を並べる。
全ては、シャルロッテ=マーリンから始まった。
と思いながら相手の位置へクイーンを置く。
あの女のせいで。住処を失い、一家は離散、これまで約束された将来は全て失った。
あの女さえ生きていなければあの女さえいなければその一心でこれまで生きてきたのだった。
こちらには既にクイーンはなく、相手のクイーンはナイトによって守られている。
女は、駒を手で払う。ごとごとと音を立てて、床へ散らばった。
ごろごろと転がる駒を見ながら、彼女は決意する。
簡単に死へ逃がすものかと。自分のような絶望と苦しみを味わいながら生きてゆけと思っていた。
自分の色のポーンを1つ拾い上げて撫でる。
「クイーンに成るのよ」と。
それがやっと叶う。
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「なんだかあまり良くない予感がする」
ある日ルフィールが呟く。
「ノワーゼ様はまだ」
シャルロッテの言葉にルフィールは頷く。場所はわかっているので、ルフィールがノワーゼへ手紙も出してはいるが、届いていないのか、それとも返事が来ないのか…。
シャルロッテには判断がつかなかったが、伝わらなければ同じことと諦める。
このところ、宰相はぱったりとやって来なくなった。だが、諦めた訳ではないだろう。
かといって、探る宛もない。
まあ、どのようなことになろうとも容易に屈するつもりはなかった。
シャルロッテは覚悟を決めて、ルフィールに語ろうとした頃、部屋をノックする音がした。至急の用であるとのことだった。
いつもとは違う剣幕に、このような時にやってくるものは、恐らくよくない知らせであろうとシャルロッテは考える。
短く、今行く意を告げてから、ルフィールにこれまでより少し厚くなった手紙を託す。これがきっと最後の報告書となるのだろうと思いながら。
「これは」
と戸惑うルフィールの問いには答えず、シャルロッテは一言告げる。「もしも、もう戻らぬようであれば、これを殿下にお渡しください。」と言い、その後、少し迷ってから護衛の任務を解く言葉を言う。それから短く礼を告げる。
そう言って出ていこうとするシャルロッテへ、ルフィールは慌てて、
「何かお伝えすることは」
と問う。シャルロッテは少し考えて、
「花は散り枯れ曲がれど、石は曲がらぬ」と。
一言残して、部屋を出た。
いつも読んでいただきありがとうございます。
あとごめん、チェス知らない。
最後のあれは……伝言というより、暗号?
詩ではない。もちろん辞世の句でもない。
ルフィールも「えっ、なにこれ」って思いながら忘れないようにメモとってくれてるはず。




